一話 ページ1
唐突に始まった地獄は界境防衛機関ボーダーと名乗る組織によって終わりを告げた。助かったと喜ぶ人もいた。家族が無事で良かったと安堵から泣く人もいた。なぜもっとはやく助けに来なかったと憎しみをボーダーに向ける人もいた。
わたしは冷たくなった母の腕を首に回し身長差からズルズルと引きずり血の細道を作っていた。父のところに持っていこうとしたのだ。父は私たちを逃がして瓦礫の下敷きになった。初めて人が潰れる所を見た。目玉がでろりと飛び出た姿を優しい父と重ねるのは難しかった。
何度も何度も瓦礫の山を五つ程超えたところで私の前に人が立ちはだかった。下を向いていた顔をあげる。そこには青い服を着た私よりもずっと年上の男の人が私と母を苦しそうに顔を歪めて見下ろしていた。
「俺も、手伝うよ」
「…」
そっと差し伸べられた手を見る。この手に、この人に母を預けていいものかと思案する。私が父の所まで行くまでに、きっと母も父も腐ってしまう。いっぱい失った。でもいっぱい知った。人が死ぬ時の温度、血の匂い、自分の肉親が無機物で潰される音。人が腐る時間をこうやって私のガラスのや小石を踏んだ血だらけの足で父の元まで向かうと知ってしまう。それが悪いことかいい子とかは分からない。けれども腐った姿で再開するのは二人は嫌がるだろうことは安易に想像がついた。
「おねがいします」
「うん、任せて」
母を腕で抱える青服は母をじっと見て10秒ほど目を閉じた。その様子を見上げる私ににっこり笑うと道案内よろしく頼むよと明るく言う。先導するように父が死んだ場所へ向かう。道中、会話はなかったような気がする。その時はただ腐る前にあわせなきゃということだけが頭の中を駆け巡っていた。瓦礫の山を身体全身をつかってこえてようやっとたどり着いたのは私の家。見るも無惨となったソレを目に焼き付けるようにして見ていたのを覚えている。
玄関先にうつ伏せになって倒れた父を見つけた。目の玉が飛び出た死体を見るのは二度目だった。無言で腕に抱えた母をそっと比較的でこぼこしてない場所にすいませんと一言こぼして父の上に乗った瓦礫を軽々とどこしていた。
乾いた父の血にこの瓦礫が父を殺したのだな思い返す。こういう時、どんな感情をすれば正解なのかが分からない。笑えばいいのかな泣けばいいのかな怒ればいいのかな。ソレを教えてくれる人はもういない
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文字数足りん
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作者名:. | 作成日時:2022年5月20日 6時