振り向いてくれない彼女【霧隠ラント】

距離 ページ15

ラント side


FSTの時間

いつも通りに生徒会の仕事で校内を回っていた時のこと





たまたま通りかかった保健室のドアが半分開いたままになっていた
なんとなく気になり中を覗いてみると、そこにはAがいた










ラント「A？」


「あ、ラントくん！」








嬉しさで口角が上がりそうになるのを抑えながら中へ入る

Aに近づき、彼女の足が怪我しているのが見えてしまった









ラント「それは？」


「友達の部活の荷物運ぶの手伝ってたら転んじゃった」








痛かったなーと軽く流す彼女に俺は心配になった





Aは優しすぎる
人のために自分が汚してしまうなんて
全く、お前には敵わない









ラント「全く…貸せ、私がやってやろう」

「え？いいよ、自分でできるよ」

ラント「私がやった方が綺麗にできる。Aは不器用だからな」

「ひどい！」




大袈裟に落ち込むAを見てははっと笑ってしまう

彼女といる時だけは楽しいと思える






俺の提案通りに手当てされると、Aは軽く汚した足を動かす

そして椅子から降りる






「ありがと！ラントくん」

ラント「あぁ」






可愛らしい笑顔、見てるだけで幸せになれそう

この笑顔をずっと隣で見ていたい。でもそれはきっと俺ではない






ラント「はぁ…」


「？」







ため息が出てしまう







近いのに距離が出てしまっている










A、お前はどうしたら私を見てくれるんだ？

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