冴える ページ15
朝、目を覚ますと明らかに寝坊したという時間だったことに気付いた勇利は慌てふためき、練習場所のリンクへ向かう。
｢ごめんヴィクトル、寝坊し……て｣
扉を開けた時、鼓膜を揺らした激しい旋律。そして美しい流れるような動きと、朝日を反射する白銀。
｢
彼が最も得意とし、この曲で世界を制してきた。
その曲を、目の前で本人が演じているのだと、思うともう目が離せなくて勇利は言葉も失って目で彼の動きを見つめることしか出来なかった。
天井を見上げ、氷上に白い手をついて、最後の一音まで踊りきった彼は、立ち上がって辺りを見渡す。
｢あれっ…勇利おはよう｣
｢おっおはよう｣
遅刻してきたことを特に咎めることなく、ランニングにでも行こうかと早速着替えるあたり勇利のトレーニングのことは覚えているのだろうが、周りの状況はきっと全く見えていなかった、そう言っても過言ではないはずだ。
｢やっぱりセレスはすごいなあ｣
｢どうして？｣
｢えっ、どうしてって…｣
汗を拭きながら、セレスは感動したように言う勇利に聞き返す。
｢僕が、悲劇のスケーター、だから？｣
皮肉めいた口調で言う彼の表情はいつもと変わらないが、はっきりとした自虐が感じ取れた。
｢いや、そうじゃなくてさ。向上心が半端じゃないっていうか、その…ほんとにスケートが好きなんだなって｣
その勇利の言葉に、少し驚いたような顔をする。
今まで、自分にかけられてきた言葉の殆どは、｢悲劇｣から立ち直った姿だけを見た言葉。
それがあまり好きではなかった。
だからこそ、自分を動かす原動力、つまりは本来の自分を固定概念の向こうに見てくれる勇利の言葉が嬉しかったのだ。
｢あはは、そうだね。僕はスケート無しじゃもう生きられない体になっちゃったからさ｣
｢なんかセレスが言うと色っぽく聞こえちゃうな｣
｢恋人は、スケートリンクですってね｣
冗談めかして言っていると、丁度リンクへ上がってきていたヴィクトルとすれ違う。
｢やあ勇利、早速寝坊かな｣
｢あっ！ごめんなさいっ｣
勢いよく頭を下げる勇利に二人は目を合わせて笑い、ヴィクトルはリンクへ、セレスは勇利のトレーニングについていくためTシャツに着替える。
｢勇利はグランプリファイナルのときの体脂肪率にまで戻さないとリンクには上げないよ♡｣
鬼コーチの言葉に嫌でも背中を押され、走り出し、景色は移り変わってゆく。
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もんとれーぬ - 更新再開してくださってありがとうございます！！ 過去の話も気になります。更新頑張ってください (2018年2月7日 0時) (
レス) id: 0455f4b2e0 (このIDを非表示/違反報告)
零様LOVE(プロフ) - ユーリ！！！の作品がもうあったなんて…！！凄く面白いです更新頑張って下さい。応援しています！ (2016年10月16日 12時) (レス) id: 8bffae3428 (このIDを非表示/違反報告)
つくし君(プロフ) - 仕事が早い！！！好きです！！！更新頑張ってください！ (2016年10月14日 0時) (レス) id: 04f956fe15 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸 - 更新楽しみにしてます！頑張ってください！(*^^*) (2016年10月12日 18時) (レス) id: c57eaf16d0 (このIDを非表示/違反報告)
那月(プロフ) - ぴよ子さん» 無いなら作ればいいじゃないという精神で作りましたww更新頑張ります〜! (2016年10月12日 0時) (レス) id: 2ae4f7b368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：那月 | 作成日時：2016年10月10日 23時
