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*演技力 ページ15

万里side


Aが泣き止んだのは9時半頃だった。そろそろ帰らなくては、と駅に向かおうとしていたが、さすがにもう暗いからタクシーで帰れと左京さんやらがうるさかったため納得したみたいだ。
まあ、左京さんが言わなくても俺がそうさせたんだけど。

タクシー代は劇団(というか支配人のポケットマネー)から出すと言われて、さすがにそれは!と断ってたけど慌てたため小銭しか残っていないようだったので渋々受け取っていた。


「気ぃつけて帰れよ」
「うん!またね、万里。皆さんも、また!」


太一や一成がやたらと元気に別れを告げていたが、他のやつらもゆるゆると手を振るなり玄関で見送りをした。

タクシーに乗り、目が合うとすっかりいつもの彼女と同じ笑顔で手を振っていた。






「万チャン大丈夫ッスかー!!!??」
「う"っ…んなでけぇ声で叫ぶな太一…頭に響く…」
「もう!具合悪いならちゃんとそう言わないと!」


タクシーを見送ったあと、抑えていた吐き気が襲ってきた。

というのも彼女がいる間、体調は良くなるどころか悪化する一方だったのだが、おっさんに泣かされてる彼女を見てそんなダサい姿は見せられなかった。


「まあ、万里が無理する気持ちも分からなくはないがな。」


彼女に心配かけたくなかったんだろ?なんて言われてしまえばその通りなので若干臣のことを睨めばははっと笑い飛ばされた。


「じゃあ、あの『心配かけて悪かった俺のことは心配いらねぇキラッ』はウソだったんスか!?」
「おいそんなこと言ってねぇだろ盛るな!つか、ウソじゃなくて演技だっつの…う"ぅっ」
「ああああああ!万チャン!はい!バケツ!」


ウソ、と言われればウソだがあくまでも演技。そう、俺の演技力の賜物。

とにかく今は、こんな姿をあいつに見られなくてよかったとその時の自分を褒めた。よくやった、さすが俺。


…明日は授業休むか。

*気付いてる→←*止まらない



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作者名:ムリ子 | 作成日時:2019年8月1日 22時

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