*声が聞きたい ページ25
万里side
夜稽古が長引き、風呂を上がったのは11時頃だった。
明日も授業があるってのに…まあ朝練は無いからいいけど。ぼんやりそんなことを思い浮かべながら、乾き切ってない髪をガシガシとかいた。
「…アイツ、まだ起きてるよな?」
アイツ、とはAの事だ。まさか会うとは思わなかったが、少ししか一緒にいることができないのはやはり心残りだった。
絶対、と言われた電話をかけようとベットの上でスマホを睨みつける。もしかしたら寝てるかもしんねーし…けど電話するの待ってたら…とらしくもなく考え込む。
「さっきからウンウンうるせぇぞ、摂津。電気消してこい」
「はぁ!?テメーが消せ…って寝てんんのかよ!」
ガーガーいいながら寝始めた兵頭に舌打ちをして、ベットを降りた。こんなうるせぇ部屋じゃ電話もできねぇだろ…部屋を出る時に、仕方ねぇから電気も消してやった。
・
夜もまだ少し暑いバルコニーで彼女に電話をかけてみるが、なかなか電話に出ない。
「やっぱ寝てんのか」
電話を切り、部屋に戻ろうと扉に手をかければプルルルッとスマホが震えた。
『─あ!もしも〜し!ちょうどトイレ行ったの、ごめんね?』
「ったく、すっぽかされたのかと思ったわ」
ごめんってー!と電話の向こうで彼女が声を上げれば、つい顔がニヤけたが今は隠すこともないか。
『万里、こんな時間まで稽古してたの?』
「まあな、遅くなってわりぃ」
『ううん、私もわがまま言ってごめんね?疲れてるのに…』
「いーっての。俺も声聞きたかったし」
ずっと待ってたのか?と聞けば恥ずかしそうにうん、と答えるのでたまには電話もいいか。と思う。
「ビデオ通話にしねぇ?顔見たい」
『え、すっぴんなんだけど』
「何回も見てる」
『…しかたないなぁ』
画面が切り替わると、口元を枕で隠す彼女が映った。寝る前だったのか、ベットの上らしい。
「顔隠すなよ」
『やだ』
「なんでだよ、おいスクショすんな」
『万里もスクショしてんじゃん!!』
顔を赤くしてスマホを睨む彼女を、今すぐ抱きしめたくなるのがむず痒い。
「やーっと顔見せたな」
『うっ…はめられた…』
「な、もっとよく見せてみ?」
う〜、と照れる彼女をからかっていれば、そのうちに眠りはじめたのでおやすみ、とつぶやき電話を切った。
部屋に戻ってから明日会った時の彼女を思い浮かべれば、いつの間にか眠りについていた。
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作者名:ムリ子 | 作成日時:2019年8月1日 22時