*同じ気持ち ページ20
なんだかんだでもう夕方、帰宅時間に被るとあいつらがらうるせぇから、と言われて帰ることにした。
「…もうちょっと一緒に居たかった」
「ん。駅まで送ってってやる。」
夜から稽古があるから家までは送れない、と頭をポンっと撫でられる。
玄関で靴を履くと、まだ少し汗をかく気温だけれど手を繋いだ。
・
他愛もない話をしながら歩けば、すぐに駅に着いた。また会えるのに、これだけ触れ合ってしまうと別れが寂しくなる。
「お、時間丁度いいじゃん。電車もう来んだろ?」
「うん。じゃあ、行くね」
「おう、気をつけて帰れよ」
彼の背中を照らす夕日が、なんとも様になっていて目が釘付けになった。
夕日のせいなのか赤くなる私に、見すぎ。とデコピンする。
それがなんだか悔しくてやり返そうとすれば右手首をがっちり掴まれる。
そのままスルスルと大きな手と指が絡んで、彼の熱がよく伝わる。
「離れたくねーの?」
「…うん。」
「素直でよろしい。…俺も、同じだから」
「えへへ、そっか」
誰にも気付かれないように手の甲にそっとキスをすると、電車来たからさっさと行け。と軽く背中を押された。
万里も同じ気持ち。離れたくないんだ。一緒にいたいんだ…!
たったこれだけの言葉でここまで浮かれてしまっては、私もなかなか単純なんだなぁ…
またね!と手を振り電車に乗れば、またな。と口パク、あるいは声に出していたのか分からないけれど、思いはしっかり伝わった。
運良く座れた座席でキスをされた手の甲を見つめる。
きっと周りから見れば変人と思われるくらい、緩みきった顔で夕日の中の彼を思い浮かべた。
・
家で一人で夜ご飯を食べていると、万里からLIMEがきた。
電話したい、と短い文にいつでもOK!と打ち込む。
すると、すぐに電話がかかってきた。
「出んのはやすぎだろ」
「へへ、かけてくるのも早すぎ」
「ははっ確かに。今何してた?」
「ご飯食べてるよ!今日のメニューはカレーとシーザーサラダです!」
電話の向こうでカレー…と呟くのが聞こえた。食べたいのかな?今度来た時は作ってあげよう。
「なぁ、今度隣町でやる舞台、一緒に行かねえ?」
「舞台?いくいく!どんなやつ?」
「え〜と?『クラシックと演劇が融合した新感覚の舞台!』って書いてある」
「万里がクラシックとか似合わない」
「うっせえ」
カレンダーにデートの文字、ついでにハートも書いておく。万里がこれを見たら浮かれすぎ、なんて言われそうだと思った。
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作者名:ムリ子 | 作成日時:2019年8月1日 22時