春を待つきみ【nqrse】

06 守るための嘘 ページ6

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誰もいない、一人暮らしにしては少し広すぎる家に入るやいなや、俺は自室のベッドに倒れ込んだ。
人と会った後だと、いつも異常にこの部屋が広く感じる。

小さく折りたたんでポケットに入れた紙ナプキンを開き、丁寧に記されたアルファベットや数字に目を通す。
何の変哲もない電話番号、それにID。

ただ一つ、メールアドレスだけが俺の目に止まった。
0113、とアットマークの前についている。
0113――日付でいえば一月十三日は、俺の誕生日だ。紛うことないその数字を、何度も何度も見返す。

「ストーカー、とか」

いやいやそれはない。可愛らしい彼女に限ってそれはない。
ぶんぶんとかぶりを振って、もう一度数字を眺める。
きっと誕生日が同じとか、友人の誕生日。もしくは恋人の誕生日とかそんなものだろう。
再度紙を閉じて、のそのそとベッドから立ち上がる。

今日は慣れないことをしたせいで疲れた。
さっさとシャワーを浴びて、明日はあらきに着いてきてもらって携帯の機種変更にでも行こう。
忘れないうちに、パソコンからメールを打ち込んだ。


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「なあ、あらき」

無事に適当な機種を決めて、手続きを済ませる。
新しくぴかぴかになった携帯のホームボタンをカチカチと何度も鳴らしながら、隣にいる奴の名前を呼んで問いかけた。

「Aってわかる？」


幾ら立っても返事が返ってこない。
不審に思い、あらきの方へと視線を移す。

「……あらき？」
「あ、ああ、ボーッとしてた……俺は知らないけど」

ひらひらと手を振りながらそう言うから、それ以上何も聞けなかった。

でもこいつが知らないというくらいだから、Aという名前を聞いたことがある気がしたのは気のせいなのだろう。
世界に一人しかいなさそうな名前って訳ではないし、だこら聞いたことがあるって、多分その程度。そうなのだと思う。




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