ふたりだけのきづなを ページ34
「楽にしてろ。着替えてくる。」
そう言って道長さんは私をリビングに通し別の部屋へ。
部屋には、物が少なく、必要最低限の物が置いてある。その中に、ひとつの写真立てを見つけた。
写真立てに入っているのは、前回のデザグラ時に話してくれた(聞き出した)彼の友人とのツーショット。
『道長さん、こんな風に笑うんだな……』
思わず独り言が漏れる。
デザグラに参加して、道長さんのことを知って、今まで色んな彼に触れてきた、。
そしてその中で見た事のない、きっとこれからも見ることはできない笑顔。
「何見てんだよ。」
そんな声がして振り返る。
道長さんは、白いTシャツに黒いパーカー、茶色のジーパン、そしてネックレスを付けていた。
『ごめんなさい、勝手に…』
「別に。見られて困るもんねーしな。んで、何見てたんだ?」
『写真、見てました。』
「写真…あぁ、透のやつか。」
道長さんは私の隣に立つと、写真を懐かしそうに眺める。
『道長さんってこんな風に笑うんだなーって、』
「んな事かよ…てか、これからどこ行くんだ?」
『道長さん行きたいとこあります?無かったら私の行きたいとこに付き合って貰うことになりますけど…』
「得にねぇ。お前の好きなとこ行けよ。」
『じゃあ、まずは映画館行っていいですか?』
私が選んだのは恋愛映画。
丁度好きなアイドルが主演を務めていて、気になっていたのだ。
私が見たい映画だから、とチケットを奢ろうとしたら止められた…。
「んなのよりポップコーン奢れ。」
だそうだ。そんな小さな優しさが積み重なり、私は彼に心を惹かれていった。
恋愛映画と言っても、私達2人の間に何か起こるわけでもなく、私は結末にボロ泣き、道長さんは私の顔を見ないようにハンカチを貸してくれた。
17人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しぃ | 作成日時:2023年9月8日 20時