春待つつぼみ～1st Spring story～ (ページ8)

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7.違う話題ページ8

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その日、何時もと同じく稽古を見た。

でも、昨日までとは違った。あの嫌な雰囲気が無い。

同じ春組のはずなのに。

「…今、つっかえずに通せたぞ」

「え？！」

一日で、何かがあったのだろうか。

前とは全く違う雰囲気。

何があったのだろう、と気になっていづみさんの方を向く。

いづみさんは何か考え込んでいるようだった。

「……？」

不思議に思ったが、敢えて聞き出さないことにした。

きっと何か、この春組をいい方向に引っ張る術を考えているのだろうと、理由もなく思った。

「あ、あの！」

少しして皆が稽古場から出ていく時、私は話し掛けられた。

「佐久間くん、何？」

「えっと……彩里さんって何処かで見たことある気がするんです。もしかして、何処かで会って＿＿」

「花咲学園高校3年3組、彩里心春」

「うわっ、真澄くん？！」

話を聞くと、佐久間くんといつの間にか来ていた(本人曰く「監督を探しに」らしい)碓氷くんはそれぞれ花学の三年生と二年生らしい。

確かに、今思うと碓氷真澄って聞いたことある。

「まさか、こんな所で後輩に会えるなんて……。でも、なんで碓氷くんは私の名前覚えてたの？」

「卒業式で聞いた」

それだけで私の名前覚えるなんて……。

私の名前なんかを覚えるんだったら太宰治の人間失格を丸覚えする方がまだ役に立つのに。

ひょっとして、彼は昨年の卒業生全員覚えていたりしているのだろうか。

……いや、逆にそれはそれで怖い。

「……あれ、碓氷くん。いづみさんのことは良いの？」

「、良くない。探してくる。」

一途だな、碓氷くんは。

「そ、そういえば彩里さん、今日は何時までいるんですか？」

「私？どうしようかな……帰らなくてもいいかもってくらいなんだけど」

「……？」

あ、やばい。ついつい口に出してしまった。

違う。いや、そうだけど違う。

「さ、佐久間くんって兄弟とかっているのかな？！」

「え、俺ですか？い、居ないですけど……。」

「……へぇ、一人っ子なんだ。意外だなぁ」

「意外、ですか？」

「うん、意外。」

面倒見良い(碓氷くんとか)から、弟とか妹とかいるのかと思ってた。

もともとは話を逸らすために出した話題だけど、こういう話も偶にはいいよね。

何となく気分が良くなって笑顔になれば、佐久間くんがどうかしたんですか？と話しかけてきた。

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