春待つつぼみ～1st Spring story～ (ページ7)

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6.小さな一歩ページ7

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夕飯を食べ終わったあと、帰ろうとした私をいづみさんが引き止めた。

「そういえば心春ちゃん、明日も大丈夫？」

「……特に予定も無いので大丈夫ですよ！講義終わったあとに来ますね！」

少しだけ考えたけれど、すぐに承認した。

予定なんか無いし、かと言ってあの家にいるのも心地が悪い。

家に居ない理由を作れるのは、正直嬉しかった。

＊＊＊

「ただいま帰りました」

無駄に大きな造りの扉を開け、そう呟いた。

かけた声に反応してくれる人はいない。

「あなた、これで何回目なの！？」

「うるさい、お前の勘違いだと言っているだろう」

「いつもいつもそんなので……誤魔化せるとでも思ってるの！？」

ヒステリックに叫ぶ母とあくまでも冷静を貫く父。

こんな言い合いはもう慣れっこだ。

おかげで、私に構うどころか話しかけてもくれやしない。

ご飯だって、殆ど用意されていない。

私は、親とも呼びたくないその人たちの声を尻目に部屋へ駆け込み、塞ぐようにイヤホンをする。

そして、声を掻き消すようにボリュームをあげ、そのままベッドに横になって寝てしまった。

いつもは夢なんか見ない。正しくは、見ても忘れているのだ。

でも、今日は違う、いつもと何かが違う。

翌日、最悪な夢を見た、最悪な気分で目が覚めた。

「行ってきます」

二人が仕事に行ったことを確認して、私は家を出た。

この家に帰りたくない、いつもそんな思いで家を出るが、今日はその気持ちがより強かった。

家で辛かったことを全て隠すような思いで講義に出席した。

そして講義が終わる。

私は、MANKAI寮へ向かった。

「こんにちは、」

「おあっ！？あ、彩里さんか……。」

「ふえっ！？」

ドアを開けたとき、向こうにいたのは皆木さん。

私が来るのは想定外だったようで、かなり驚いている。

「み、皆木さん……？」

「あれ、心春ちゃん、来たんだね！」

丁度そこにいづみさんが顔を出した。

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