春待つつぼみ～1st Spring story～ (ページ16)

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15.他人と身内ページ16

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「彩里……心春」

いきなり名前を呼ばれた。

しかもフルネームで。……この、声は。

「なんですか？……"海春さん"」

「随分と他人行儀なのね…」

この人は……まだ、私を妹だと思っているのだろうか。

ゆっくり息を吸い込んで、その一言で吐き出す。

「……私を置いて逃げた癖に、もう身内だなんて呼びたくない！」

私の大声に、周りの人がざわつく。

いつもの私なら恥ずかしがって黙るが、今日は違った。

「最っ低！あんたなんかもう赤の他人だ！」

「……それは、」

「うるさい！二度と私の前に現れんな！！」

心のままに叫んだ。今までの怒りと悲しみを秘めて。

周りがどうなってるかなんて知らなかった。

「……心春！」

「……シトロン、さん？」

名前を呼ばれ、手を引かれた。

そのとき初めて、周りがかなり騒がしくなっているのに気が付いた。

「心春……あのね」

「……。」

「今日は話をしに来たけど……これじゃあ無理ね。日を改めることにするか。じゃあね。」

そう言って、あいつは背を向けて何処かへ行ってしまった。

もう事が終わったと思ったのか、周りにいた人たちもばらばらと離れていく。

「シトロンさん、ごめんなさい」

「大丈夫ヨ。……良かったら、何があったのか話して欲しいネ。」

この事は、私一人で留めておくものだった。

あいつが現れるなんて予想外だったけれど……。

このままじゃ、シトロンさんだけでなく、春組の皆やいづみさんにも迷惑をかけてしまうかもしれない。

私は決意した。

「……明日、皆の前で言います。」

私の過去と、別れるんだ。

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