春待つつぼみ～1st Spring story～ (ページ2)

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1.春の始まりページ2

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肌に当たる陽の光が暖かくて気持ちがいい。

風が吹いて、桜の花弁が飛ばされていったのを何となく見届けていると、何処からともなく声が聞こえてきた。

「一緒に旅に出よう、ジュリアス、ええっと…」

よく通るその声に、私は惹かれたように立ち止まる。

どうやらその声は、この近くの建物から聞こえているようだ。

そして、吸い寄せられるように建物に近づいていった。

「……あれ？彩里さん？」

呼ばれた名前に反応し、振り向くと＿＿

「皆木……さん」

「やっぱり、彩里さんだ。こんなところで会うなんて奇遇っすね、なにやってるんすか？」

そこに居たのは、同じ大学の皆木綴だった。

高校が同じという訳では無いが、よく講義が重なるため互いの顔は見知っている。

「えっと……声が、聞こえて、気になって。皆木さんは、どうしてここに？」

「実は俺、ここで劇団に入ってるんすよ。……あ、興味あるなら、これから稽古なんで見ていきますか？」

……え、と私が声を出す前に、皆木さんはドアを開けただいま帰りました、と言った。

そして、そのまま立ち尽くす私に、

「付いてきてください」

と声をかけた。

連れてこられたそこは、私の暮らしている世界とは全く別の世界のようだった。

きっとみんな初心者なんだろうけれど……。

それ以上に、芝居、演劇に対する熱が凄い。

「カントク……今のどうだった？」

……そうではない人も居るようだが。

暫くしていると、みんなの前に立っていた女の人が私の存在に気づいた。

あれ？と不思議そうな顔をしているその人に、皆木さんが説明をする。

そして、どうやら説明が終わったらしいその人が、私に向かって歩いてきた。

「えっと……彩里さん、かな。この劇団に、興味があるの？」

「あ、えっと……さっき、ここ通ったら声が聞こえて……そしたら、皆木さんが見ていきますかって言ったので……」

言葉を濁す私。ああ、こういうときにはっきりと自分の気持ちを言えるようになりたい。

「そっか……あのね、彩里さん。

ここで、働いてみる気は無い？」

「……え、」

唐突に言われた、その言葉。

流石に、驚きが隠せなかった。

……いや、驚きを隠すことが得意なわけではないが。

「試しに、今日一日だけでも。ね？」

その必死に頼む姿を見て、いえやりませんなんて言える私のではないわけで。

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