絶対に、 ページ49
あぁ、振られたんやなぁと。
すぐにわかった。
握られた手はそのまま離されて
凪の体温が消えていくのを感じる。
しばらくすると、凪が口を開いた。
『…ありがとう。由伸。』
…あぁ、またそうやって
気もないやつに優しい笑顔を向けるから
また好きになる。
『でも、俺が着いて行く人はもう決めてるんだ』
「…おん。知ってる」
『やっぱり。知ってるだろうなぁって思ってた。』
「…はーー…振られてもた。」
『…うん。ごめん』
そんな申し訳ない顔しないでくれ。
「…そんな顔せんで。」
『こっちのセリフなんだけど?笑』
「じゃあ…もう、おしまいやね」
『うん。そうだね』
「…さみしぃなぁ」
『…だね。あっちで会ったらまた、ご飯行こーか』
「おん。…なぁ凪」
『ん?』
「ありがとう。今までもこれからも、ずっと大好きやよ」
『…うん。こちらこそ。俺も大好き。』
振られて、胸は苦しいはずなのに、
むしろ心が軽くなっていて。
どれだけ俺が凪に固執していたかわかった。
逆に自分を苦しめてた。
俺と凪は違う道を歩んで行くけど
また、どこかで
一緒にプレー出来るといいな。
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由伸は最後に一言。
「ありがとう」だけ言って、帰って行った。
由伸の後ろ姿を見届けて、
すぐに翔平に電話を掛けた。
翔平は案外すぐ、電話に出た。
『もしもし?』
「もしもーし。珍しいね。凪から電話なんて」
『うん。ごめん急に』
「全然平気。何?」
『翔平。』
『ぜーーーーーーったい!!追い越してやるから!!』
「!!…はは、急に電話寄越したと思ったらそれかい。…越してみろ。俺は登り続けるからな」
今まで助けてくれた人達に
由伸達の日々に
練習してきた時間に
報いるために。
由伸達の思いを
無駄にしないように。
止まらずに進んで行こうと思う。
それが、俺が出来る唯一の恩返しだから。
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作者名:あかい x他1人 | 作成日時:2023年7月3日 0時