思いを、 ページ48
由伸目線
ただひたすら、足を動かす。
伝わらなくたっていい。
初めて会ったあの日から。
『よろしく』
初めてバッテリーを組んだあの日から。
『由伸なら出来るよ。』
俺はずっと
『大丈夫』
ずっと。
『由伸なら』
支えてくれる凪が
『泣いていいんだよ。』
今も
大好きなんや。
『ずっと友達でいよーな!』
「はッ、はぁッ、」
こんなに走ったの久しぶり。
この感覚も、久しぶり。
喉がカラカラだ。
足も痛い。
心做しか、目から暖かいものが溢れ出てきた。
拭いもせずにただ走る。
思いを伝えるためだけに。
なぁ凪。
俺はお前の事大好きやよ。
ずっと一緒に、野球してたい。
好きやから。
大好きやから。
凪の家に着いてチャイムを押すと、すぐ出てきた凪。
家に入れてもらってすぐ。
こちらを真っ直ぐ見つめる凪の頬に手を伸ばし、そっと言った
「…ッ、凪……行かんといて」
結果なんて、分かっとる。
でも、思いだけでも
伝えさせてくれ。
_____________________
凪目線
「…ッ、凪……行かんといて」
由伸は息が切れてる。
走ってきたのが丸わかりだ。
なんでタクシーを使わなかったのか気になるとこだけど…
急に言われて困惑する。
あんなに冷たかった由伸が、急に。と暫くアワアワしていると、由伸は続けた。
「凪が翔平くんのとこ行っちゃったらきっともう、二度と一緒に野球出来んくなるし、一緒にいれん。そんなん、俺嫌や。耐えられん。凪。凪が大好きや。なぁ、頼む。無理を承知で言うよ。」
「俺と一緒に来て欲しい。」
由伸は大好きだ。
由伸と野球するのも、大好き。
叶うなら、俺も由伸とずっと一緒に居たい。
でも、
俺の"夢"は、そこじゃない。
ふと由伸の顔を見ると
苦虫を噛み潰したような顔をしていて。
きっと、結果はわかっているのだろう。
俺は由伸の手を掴むと
そっと下に下ろした。
312人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あかい x他1人 | 作成日時:2023年7月3日 0時