お互い、 ページ47
由伸目線
あの日
俺は凪に「お互い頑張ろな」だけ言って
逃げ出すように帰った。
あの場に居たら、なんだかまだ凪と居れるような気がしたから。
言いたい思いは、帰ってから。
「ぅう"…はぁ……」
まるで声のように涙が溢れ出した。
泣いても泣いても、凪が行くことは変わらない。
数日間泣いて、
孤独を埋めるために暇そうな友達と飲みに行った。
(お、きたきた。お疲れ様。)
「ん、お疲れ。」
(お前日シリ終わったあとなのに飲んで大丈夫なん?)
「おん。大丈夫。はよ入ろうや」
(お、おう)
どうでも良い話に花を咲かせて
その度に自分が虚しくなる。
少し飲んで、酔いも回ってきた頃。
ふと友人が言った。
(いや〜それにしてもビックリしたなぁ)
「何が?」
(凪のメジャー。キャッチャーでメジャーって珍しいし、日本は結構騒いでるやん)
「…ふーん」
(なんだ。由伸はあんま興味ない?)
「別に。一緒会えないって訳じゃないしな」
(ふ〜ん…凪はすっごい寂しがってたけどなぁ)
「…」
(『由伸達ともう練習出来ないって思うと、やっぱ寂しーよなぁ。俺もっと由伸達とずっと居たい』って。羨ましいわ。そんな言われるの)
「…それほんま?」
(うん。…そろそろやろ?行くの。…今しかないんやない?)
「…ごめん今度奢る。これお金。」
(ええよ別に。早く行ってこい)
「ありがと」
店を出て、そのまま全力で走る。
こんなに走るの、いつぶりだろう。
凪の家はここから歩いて30分くらい。
でも、タクシー捕まえる時間がもったいない。
走れ。
何も考えずに。
___________________
凪目線
球場からちまちま持ってきた荷物を片付けながら、思い出に浸る。
正直めちゃくちゃ寂しいけど、今年は1回あっちに行って、また帰ってくる予定だ。
まだ我慢できる。まだ、会える。
"お互い頑張ろな。"
由伸の言葉が思い出される。
颯一郎とか優希とかと話している中でも
何故か由伸だけは異様に冷たかった。
所詮、同期。
それ以上も以下もない。
同期だったから、仲良くしてただけ。
…でも、それでも俺は
由伸達の事が大好きだった。
離れるのは寂しいけど
わがまま言えないから。
お互い、ね。
いつかまた共にプレーできる日を夢見て。
なんて考えながら、もう寝ようと思ったその時。
玄関のチャイムが鳴った。
由伸「ッはぁッ…!凪…!!」
『…よし、のぶ?』
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作者名:あかい x他1人 | 作成日時:2023年7月3日 0時