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「…さっきは急になんか、ごめん」
「まあ確かに急ではあったけど」
横に並んで歩く松村くんから聞こえるそんな声にマフラーをぐるぐる巻きながら「さっきのわたしも熱くなっちゃって恥ずかしいからお互い忘れようよ」でもさっき言ったことは嘘じゃないよ、と顔を上げて松村くんの方を向けば「うん」と小さく頷いた綺麗な横顔に安心して「何奢ってもらおうかなー」と呟いてから地面の石を蹴飛ばした。
「てか前から思ってたけどAさんは暇なの?」
「…それはまた悪口?」
「違うけど」
だってわざわざあんな4階の端まで結構な頻度で来るし友達いないのかなって思って、と心底本気ですと言わんばかりの顔と少し心配そうな声に「友達いるってば!明日だって遊びますから!?」と失礼な!と石の代わりに松村くんのかかとをつま先で軽く蹴る。
「痛いんだけど、骨折れた」
「あのさ、私のことなんだと思ってるの?」
もう怒ったから唐揚げ以外にもなんか奢らせようと思って横に見えてきたコンビニの方に視線を向けて自動ドアをくぐる。
そして「買いすぎだろ」と呆れられるぐらいにお菓子だのジュースだのをぽいぽいとカゴに放り込み、レジ横のホットスナックまで指さしてなんだか満足した。横の松村くんは金額を見て特大のため息をついていたけど。
「松村くん何買ったの?」
「Aさんって人がアホみたいに物買うからお茶しか買えませんでしたよ」
あーあ、かわいそ、とレジ袋から自分のお茶だけ引っ張り出して袋ごと「あげる」と中々に買わせた物たちを差し出すのを受け取る。
「お茶好きなの?」
「まあ、うん」
なんか同じお茶ばっかり飲んじゃうんだよね、とペットボトルを開けながらそう呟いてレジの横のイートインスペースに腰掛けるのに「ふうん」とだけ返してあまり良くない空模様を見つめながら私も買った…というか買わせた飲み物を開けた。
「ていうか松村くんこそあんな4階の端っこで何してたの」
ずっといる感じだったし、とストローを刺しながら松村くんの顔を見れば「暇つぶし」それだけだよ、と返ってきたのに「…松村くんこそ友達いないんじゃないの」と思わず返してしまったのは多分間違いじゃない、誰だって思うでしょそれは!
「いるよ失礼だな」
「さっき松村くんが私に言ってたことなんだけど」
「まあ、旧校舎行き始めた時はいなかったんだけど」
「いないんじゃん」
じゃあ私と友達になれてよかったね〜、と笑いながら告げれば「はいはい、そうだね」と大して興味もなさそうに返された。もうちょっとなんかないの?
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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年12月9日 22時