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「急にどうしたの、もう仕方ないじゃん、反省することがあるならそれはもうそれって割り切るしかないし」




 私は松村くんと仲良くしたいって思ったんだよ、まだ高校せいだよ、これからなんてなんだってできるよ、でも、と矢継ぎ早になる言葉に目の前の松村くんは私の最初の言葉には少しだけ視線がぐらついたもののその後の言葉には目を見開いていくばかりだった。




「幻滅なんてしてないし、気持ち悪いなんて思ったことないよ」
「でも、」
「松村くんだってあのときみたいな寂しい顔してないのに、そんなこと言われたら、」



 …かなしいよ、それは、となんだか私が泣きそうになる。自分で自分のことを松村くんが変えられたことは、私にだってわかる。彼は少し感情や表情、その時に置かれている状態が顔に出過ぎだ。だから、わかる、全てが間違いじゃなかったことも…と、この関係性の私が言っていいものなのかわからなくて口をつぐんで「かなしいよ」とぐっと涙を堪えようと唇を噛んでもう一度それだけ呟けば「…ごめん」と松村くんのちいさい声にやっと涙が引っ込んでくれた。




「やさしいね、Aさんは」
「なにそれ、私はずっとやさしいよ」
「そっか、それもそうだね」




 俺がいちばん知ってるか、と聞こえないぐらいに小さい声は、きっと私に聞こえていると思っていないだろう。茶化したはずの言葉は案外肯定で返されてどうすればいいかわからない。ずっと優しくはないだろって笑い飛ばしてくれないと、ちょっと恥ずかしいよ。




「結構いいこと言えるんだなって思った」
「あのさ、バカにしてる?本心なんだけど」
「これ言うか迷ったけど、随分Aさんもひねくれてるよね」
「それ松村くんが言うの?自分に全部返ってきてるよ」




 と睨みつければ笑われたのに、いつもと同じ笑顔に、安心した。




「…なーんかお腹すいたかも、誰かがものすごいエネルギー使う話させるから」
「…悪かったな」




 結構勇気要る話だったんですけど、と階段を降りながらぶつぶつと文句をいう松村くんを無視して「なんか奢ってよ、わたし唐揚げ食べたい」と勝手にコンビニに行く約束を取り付ければ「わかったよ」と呆れた顔で笑われるのに「呆れないで喜んで奢りなよ」と睨みつけておいた。




「あのさ、奢ってもらうんだよね?偉そうすぎるだろ」
「当たり前じゃん、そっちこそ呆れないでよ」





 そう言って足早に階段を降りて後ろから聞こえる私よりもゆっくりとした足音を聞きながら靴を履き替える。「…俺より俺のこと、見抜いててすごいかも」という声は聞こえていなかったみたい、だけど。




「なんか言った?」
「…言ってねーよ」
「あ、そう」


 


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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年12月9日 22時

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