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「…本当にいるじゃん」
じい、と柱の影から携帯を眺める京本くんの姿を確認するもイマイチ彼のそばに近寄らずに足踏みする。いや、こんなのヤバいやつになってるって自覚はあるよ、柱の陰から学部でめちゃくちゃにモテていらっしゃる方を見つめるているやつなんて見つかったら通報されてしまうかもしれない。
ちらりと腕時計に視線を移せばもう時間は待ち合わせの2分前を指している。そろそろ行かなければだけど待ち合わせ場所別な場所にすれば良かったって今更思ったよ！何で学校で普通に待ち合わせちゃったんだろう！京本くん立ってるだけで目立つのに！
やっちゃった…なんだか最近やらかしてばっかりだ…と深いため息を吐けば「何してんの？」という目の前から聞こえた声にえ？と顔を上げる。
「いつまで黙ってこっち見てんの？早く来てよ」
そう言って眉間に皺を寄せる京本くんが私の目の前に立って不思議そうに私を見つめるのに「うわ！何！」と私が驚いてしまった。いや京本くんの言ってることはごもっともであり、私はもう場所に着いていたにも関わらず柱の影から人を見つめるというよくわからないことをしていたのだから。
「まあいいや、何食べたい？」
「え、あ？なんでも、好きだよ？」
「何でも？なんか今日大人しくない？」
絶対食べたいものすぐに叫んでくると思った、と驚いた顔の京本くんにいつも大人しいし叫ばないけど、と言えば「ちょっと意味わかんない」と笑われた。笑わないでほしいし京本くんも大概だよ。
「がっつりいこうよ、俺焼肉食べたいんだけどどう？」
「えっ！」
「うわ、超嬉しそうな顔してんじゃん」
「顔間違えた」
「顔間違えた？」
やっぱりAさんは面白いかも、もっと早く話しておけばよかったね、と何が良いんだ？私はよくないけども？と京本くんの言葉に言い返しそうになるも今日の食事は京本くんの奢りだということを思い出して口をつぐむ。凄い睨むね、と言われたのでもう言い返しているも同然だったが。
行こうか、混むね、と私の横に並んで歩き出した京本くんにいやまだ大学の中だし…と思いギリギリ他人？と思われる距離で歩けば「遠くない？」とすぐにバレたが遠くないと一点張りをしておいた。
「普段焼肉食べる？」
「地元いた時…高校の時は友達とも家族ともよく食べてたけど大学来てから一回も食べてないや」
「えっ、そうなの」
「1人じゃなかなかね」
「まあそうか」
と、喋りながらじゃあ店のおすすめはラーメン屋行く時に聞こうかな〜とマップを眺める京本くん。…え？ラーメン屋も一緒に行く前提なの？
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
