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そのあとすぐに俺から背を向けて自動ドアを開けてしまったAさんに慌てて名前を呼べば振り返った姿に「もうわかってるでしょ」と自分でもびっくりするぐらい自然な声で驚く。もうわかるでしょ？こんなの好きな人にしかしないって、わかるよね？そう思いながら視線を合わせて揶揄うように笑って見せれば多分もうそこでAさんは次に俺が言う言葉をきっと知っていたと思う。そこまで鈍感じゃない、まあかなり鈍感だけど。
「好きだよ」
多分そう言った気がする、この瞬間はめちゃくちゃに緊張していたのであまりよく覚えてはいないけど。うまく飲み込めないのか震える唇と赤くなる顔のまま俺を見つめるのにそのまましばらく顔を見つめていればぐるりと今度こそ背中を向けて消えてしまった。ここまできて何も言わないなんてないよね？思わずこぼれた笑みは気づかれたかな、まあ気づかれていてもいなくても、いいんだけど。
…と、気持ちを伝えたが本当に返事がない。仏頂面をし続けては時折難しい顔をするのに「もう素出過ぎでしょ」と思わず笑ってしまったのも束の間、「何か言うことないの？」と結構期待して言ったんだけどな、黙り込んでしまった。え、ないの？流石に悲しいし「私のことを好きなんて変だ」とまで言われた。変ではないでしょ。でもいつもより緊張した空気感が嫌じゃなかったのは、きっと気のせいじゃない。
そのあと樹やら慎太郎やらAさんの友達やらを交えてコソコソしているのを視界の端で確認して、Aさんが知らない女の子に絡まれているのもなんか、確認したというか風の噂で聞いた。はやく教えてほしいな、もうそろそろ待てなくなってきてるんだけど。
そう思っていれば渦中のAさんから「明日時間ある？」というメッセージに思わず一人で踊りそうになった。ありまくりだよ、そう思いながら返信すればぎこちない返事が文面でもわかるのに今度はなんだかかわいくて笑ってしまう。まあ普通に振られる可能性もあるわけだけど。
でもどうやら一筋縄では行かない。呼び出されたところに向かえばなんかAさんは例の知らない女の子に絡まれているし、なんか俺にその子は用事があるらしい。ぴしゃりと話してるから後にしてと言っても下がってくれないのにどうしようかと思っていればがしりとなぜか俺が腕を掴まれるのにびっくりしてしまう。いや、マジでなに？そう念を込めて並んでしまいそうになったその時、なぜかAさんまで俺の腕をがしりと掴んでいた。いや、それもまじで何？
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
