不協和音ラブソング (ページ35)

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きみだけのラブソングページ35

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　別に何も印象なんてものはない。同じ専攻のどこにでもいるような子、その他大勢の1人で、多分向こうも俺のことをそう思ってる。それだけ、それだけのはずの女の子がこの日から全く変わってしまった。

　行きたくもない飲み会、つまらない会話、てか俺そういうの苦手なのにな…と若干イラついたまま大したものも居酒屋で食べられなかったため1人ラーメン屋に足を運んだのは今となっては拍手喝采ファインプレーだ。ここから全部始まったのだから。

　ガラガラと引き戸を引いてぼんやり顔を上げれば「うんめ〜…」と小さく聞こえた声になんだか聞き覚えがあるような、ないような気がして声の方を凝視すれば「え？」と思わず目を見開く。

　すっかりリラックスしきった服装にラーメンを啜る横顔をじいと見つめていればおもむろにその顔がこちらに向いた瞬間には「Aさん？」と言葉が飛び出していた。いやわかるよ、話したことないとはいえ人数の少ない専攻が同じなんだからさ。

　にしてもいつもの印象が違う。いつもはなんか、その、ふわ〜清楚〜という感じがするけど今日はなんか違い過ぎる、でもまあ、今思い返したらそれがきっとなんか、良かったんだろうなとか、思うけど。

　その後何してるの？と問いかけたが別にラーメン食べてる以外にないか、と思い「それなに？」と食べてるものを聞くことにした。醤油麺増し味玉乗せ美味しそうだけど夜中にめっちゃ食べんの面白いな。

　そう思って横に腰を下ろせばもうすでに俺には何も興味がなく、ずるずると美味しそうに麺を啜っていて思わず吹き出す。夢中なその顔になんだか楽しくなって「フードファイトしてる？」と問いかけてしまったが多分これは言葉選びを間違えた、「は？」という顔をして首を傾げてしまった。

　その後も大した会話もなく、俺の食事が運ばれてくる前に食べてしまったAさんは「お、おやすみ…またね」とぎこちなく笑って鍵やら携帯やらをポケットに突っ込んで背中を向けてしまう。…でもなんでここでただ「うん、おやすみ」って言えなかったんだろ、結構夜中にラーメン食べてる？みたいなことを聞いた気がする、その後何話すかわかんなくて「ふーん」しか言えなかったけど。

　…でもそこで夜中にいるの？とか聞いちゃった時点でもう気になってたのかもしれないね。

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