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「あ、ったま痛え…」
全然眠れなかった。飲み会の後なんて快眠にならないことがないのに今日は全くダメだった。京本くんの言葉と表情が永遠に頭の中をぐるぐると巡り続けるわ自分の気持ちは分からなくなってくるわで最悪だ。
…でもそもそも京本くん、私のこと好きになるタイミングとかあったの？どう考えてもなくない？初対面は深夜にでかいラーメンを啜る姿、焼肉を奢ってもらったとき、次にちゃんと話したのはロング缶をぶらぶら手に下げながら夜中に歩いている時、どう考えても何かを魅力的に感じるタイミングがない。なさすぎる。
でも京本くんが冗談であんなことを言うともなんだか思えずに悶々としたまま朝を迎えてしまったと言うわけだ。最悪なことに今日は必修授業のためサボるわけにはいかず、渋々服に袖を通して化粧をしてため息をつく。重い、足が重すぎる…
学校に近づくにつれて賑やかになっていく道を重い気分のままみつめてとぼとぼと歩けば「あっAちゃん」という声に顔をあげれば「で、付き合うの？」となぜかにやにやの田中くんが立っていて思わず「は？」と眉間に皺を寄せて低い声が出た。
「そんな不機嫌になる？」
「だって意味わかんないし」
「Aちゃん俺の前でもなんか素出てんね」
「…意味わかんないなあ」
「ぶっ、無理あるって」
取り繕った声色と表情にしたり顔をしたがだめだった。吹き出した田中くんに「…なんか聞いた？」と言えば「2人で抜け出したけどなんかした？って聞いたらうん告白って言ってたよ」と返ってきて卒倒しそうになった。マジだ…夢なんかじゃなかったんだ…と思いながら引き攣った笑みを浮かべて「へ、へえ〜…そうなんだ…」と呟くのが精一杯。田中くんに背中を向けて「じゃ、じゃあね…」友達いるから…と歩き出せば「早く返事してやってねー」と余計なお世話すぎる言葉が飛んできたのに無視をする。声がでかい！
「多分全然待ってくれないからね！」
「知ってるよ！」
しー！と口に指を当てて睨めば田中くんはまた楽しそうに笑っていた。きみも目立つんだからあんまりそういうことしないで！てかまず告白されたこと肯定してないんだけど！と思いながら足早に講義室に入って友人の横に腰掛ければ「汗やばいよ」大丈夫？と不安そうな顔をさせてしまった。ごめん、これは冷や汗です。
始業間近ともあってかなり席が埋まってきた。この授業は出席点の必修なのでみんなきちんと出ているが、京本くんの姿はまだない。寝てんのかな？いや、べつに、京本くんが来てなくても、関係はないけど、ね。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
