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「京本くん、言ってる意味がわからないよ」
「なんで？」
「何でって…私がいなくても京本くんはちゃんと楽しそうだったよ、卓だって違ったし…」
「Aさんの話してくれたからね」
「え」
「Aさんの友達が偶然俺の目の前座っててAさんの話してくれたから」
意外と猫かぶってない方が私大好きなんだよね、マジで友達になれてよかったって笑ってたよ、よかったね、と京本くんは相変わらず穏やかに微笑んでいる。私は、呆然としたまま動けないでいる。なにそれ、いや、友達のその言葉はめちゃくちゃ嬉しい、今度会ったらキスでもしておこうと思うぐらいには有頂天になりそうだが今はちょっとそれどころではない。きょうもとくん、なんか変だよ、酔ってるのかな、酔ってないなら、それは、それはきっと、私でも気づくやつだよ、私の勘違いなら早く否定してよ。
「京本くん今日酔ってる？」
「2杯しか飲んでないよ」
「…じゃあ変なものでも食べた？」
「Aさんじゃないんだから」
「失礼だってば！」
茶化してる場合ではない。するりと本質を突こうと思うとかわされる。掴めないけど掴める位置でずっとこっちを見ているのがタチが悪い。どこまでが本当なの？ここまで考えることになると思わなかった。ぐるぐるとそんなことを考えていれば気づいたときには私の家と京本くんの家の分岐点に立っていた。こんなに悩む日々が続くのか？とどっと疲れたまま「じゃあ京本くん、あんまりそういうこと人に言わない方がいいよ…」と背中を向けようとすれば「この前の俺の話聞いてた？」とまた京本くんがいる位置へと腕を引かれて戻された。
「危ないじゃん」
「夜でしょ？この前ほど遅くないし帰るって1人で」
「暗かったら全部一緒だよ」
帰るよ、と私の家なのにもう位置を覚えているのか？と思うぐらいはっきりした足取りにまた頭を悩ませることになる。こんなのが帰るまで続くのか？長いけど落ち着かないから歩く速度は速く感じる。
多分百面相をしているであろう私は時折京本くんに「大丈夫？顔すごい変わってるけど」とツッこまれるが不意に私が見る京本くんの顔はいつも涼しげでずっと綺麗なままで何も言えなかった。私だけだった、こんなに意味がわからないのは。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
