15 ページ15
.
「…あ〜10連勤やばすぎ、酒飲も酒」
バキバキと肩を鳴らしながらまばらな車通りの道路を歩きながらコンビニに足を踏み入れる。
自分と同じぐらいの歳の店員さんが「いらっしゃいませ〜…」と疲れたように呟くのに「疲れるよなバイトマジで…」と心で労いながら冷ケースの前に立って缶を数本カゴに入れてぽいぽいと食べるものも一緒に入れてずっしりしたビニールを手に下げた。
1人で飲んだら誰にも迷惑かけずに泥のように眠れるから昼夜逆転しないし…と言い聞かせて飲酒を正当化しながら夜で少しひんやりした夜風にあたりながらマンションに向かう。
少し遠くの繁華街がまだ眩しくて少しだけ目を細めた。飲み会とかしばらく行ってないしあんまり遊んでないな…最後に誰かとご飯食べたりしたのは京本くんがそういや最後だ。友達も最近忙しいし。
「京本くん元気かなー…」
なんだか柄にもなくセンチメンタルな気分になり思わずそんなことを呟いてしまった。そういや京本くんと家の裏のラーメン屋で会った時もこれぐらいの時間だったなと思いながら歩いていればドンと誰かの肩にぶつかり「あ、すいません」と顔を上げる。
「あ、いや、こちらこ、」
「あれ？き、京本くん！？」
「え、A、さん」
少し上にある肩、そして顔を見上げればぱちぱちと驚いたように瞬きを繰り返す京本くんが立っていて思わず私まで驚いて足を止めてしまう。偶然もすぎる、何でこんな真夜中にこんなとこに京本くんが。
「京本くん何してたの？もう2時になりそうだよ」
「飲み会だったけどつまんなくて帰ろうと抜けただけ」
「なるほどね〜てか飲み会いいな」
私はこれから1人で飲むよ、と手元のビニール袋を持ち上げて笑って見せれば「…そっか」とどこか濁った表情をした京本くんがぼんやりとした街灯の明かりで照らされているのに思わず口角が下がって、ずるりもビニール袋を持ち上げていた腕もなんだか落ちてしまった。な、なんか言っちゃったかな…やばいこと、とか。
「じ、じゃあね、こんな時間だし帰るね」
京本くんこの時間から家帰るなら距離的にもタクシーだよね？となんだか気まずい空気から逃れようと手を振れば「やめるわ」という京本くんの声に顔を思わず上げる。
「や、やめる？どういう、」
「帰るのやめる」
それ一本俺にちょうだい、そう言って京本くんが指を指したのは私の持つビニール袋の向こうに透けるチューハイ缶だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
