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「それなに？」
「え？」
「食べてるやつ」
「…しょうゆ、麺増し味玉のせ」
「それにしよ」
ガーと音を立てながら食券機にお札を吸い込ませて普通に私の横に座って手を拭き出す京本くんに「な、んでいんのかな」とまだ疑問は残るが麺が本当に伸びてしまうので普通に食べることにする。おいしい、食い意地が勝った。
…あれ？でもこれさ、やばくない？学校と私全然違うよね？いつもはこんなダルい服着てないしもごもごと横の京本くんを見ないように早く食べ終わるように無言で麺を啜っていれば「むぐ、」と急ぎすぎて変な声が喉奥から漏れて倒れそうになる。まずい、「深夜のラーメン早食いで女子大生意識不明」は流石に恥ずかしすぎる、そう思いなんとか手元の水を煽り事なきを得る…得たはずだった。
「ぶっ…ふふ」
「…え？」
「なんで1人でフードファイトしてるの？」
「し、してないけど…」
横で綺麗な顔のままラーメンを貪る私を見つめて京本くんが吹き出して手の甲で口を押さえて笑うのをごくんとラーメンを飲み込んでぽかんと見つめる。え？私の普通の食事なんだけど、人と思えなかったのかな、京本くんありえん顔綺麗だしな。
そう思いながら特にそれ以上の会話もなく、喉詰まりを心配してずるずる少しペースを抑えたままラーメンを食べ終え、「ごちそうさまでした」と呟いたと同時に京本くんの目の前にラーメンが置かれる。なんだかいいタイミングだな…と思いながら机に置いていた鍵と携帯をポケットに突っ込んで、何も言わないのもなと「おやすみ、またね」と他愛のないことを言ってみる。
「うん、あ、」
「え？」
「結構いるの？」
「なにが？」
「夜中にラーメン屋とか」
食べてるの？ともぐもぐ付け合わせのナムルを頬張る京本くんに問いかけられてここでもうシラを切るのもと思い「…まあ、ぼちぼち」と呟けば「へえ」と言われて自分のラーメンに戻ってしまった。興味ないじゃん何で聞いた？
うま、と京本くんがキラキラした目で呟いて意外と夜中なのにいい食べっぷりに「似合わんなラーメン、毎日フレンチ食べてそう」などというよくわからない感想を抱きながら席を立つ。
「ごちそうさまでしたー」
「はーい！ありがとうございましたー！」
店員さんの元気な声を背中に受けながら夜道を歩く。よく考えたらこんなことに興味ない方がまあいいか…てか京本くんのひとくちの大きさ私の半分ぐらいでなんか色々辞めたくなったな…と思いながら鍵をぷらぷらさせてマンションのエントランスを潜る。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
