演目。*サーカス組* ページ25
「み、みんな、」
かひゅ、と掠れた音が喉から出る。
手足が冷めていく。冷や汗が背中を伝っていくのを感じる。
おびただしい血溜まりの中にうっすら混ざるピンク色の固形物。
原型を留めていない肉塊が辺りに散乱しており、もはや誰なのか、誰と誰が混ざりあっているのかも分からない。
こういう時って大抵吐き気がするんじゃないのか、と冷静にもそんな事を考えながら舞台を乗り越え裏手に向かう。
当たり前のように広がる血に一瞬息が詰まる。が、せめて彼の安否だけでもと死ぬ気で足を進める。
あぁ、これは団長だ。
マルガレータ、は?マイクもいないんじゃ、モウロくんも。
消えた何人かを頭の中で復唱し、警察へ届けなければと自分に言い聞かせる。
例えどれだけ嫌な奴でも生きる権利くらいはあるんだから。
早足に進む中、1つだけ仕切られた部屋があった。
仕切りと言っても布が垂らしてあるだけの。
なんの躊躇もなくその布を引き剥がすと、顔の無い死体が。
顔の皮を剥がされ、右脚がない。死体。
「ジョーカー、」
何故か分からないけど、彼を思い浮かべた。
可哀想な、醜くて、泣きピエロ役の。
誰が、誰がこんな事。
涙は流れなかった。代わりに、怒りで強く噛み締めた唇から血が流れる。
許さない、許さない。
怒りで沸騰しそうな頭を回転させ考える。
この巨体のジョーカーを絞め殺し、かつ人間を細切れにできるもの、確かここにはチェーンソーがあったはず。チェーンソーを振り回せる奴。
ナタリーは非力、マイクはガキだ。モウロなんて使い方も知らないだろう。
この前捨てられたヴィオレッタは四肢がない。
セルジオ?
消去法で犯人を導き出す。
あぁ彼なら。クズだしイカれてる。納得だ。
外から足音が聞こえる。彼を置いていきたくはないけれど仕方ない。
駆け足で裏の出口へと向かう。
家へ向かおう。荷物を持って、奴を殺しに行く。
唯一の友達を奪ったクソ野郎。許さない。
見慣れたボロ家へ着くと、ドアの前に一通の手紙が落とされていた。
赤い蝋に変な模様の付いた封がされている。
考えるよりも先に手を伸ばしていた。あ、と思った後には封を破って手紙を取り出している。
こんな手紙を読んでいる場合じゃないのに。
ペラリ、と捲った手紙には招待状とだけ書かれており、裏をみても何も無い。
封の後ろには見慣れない住所。
おかしいな、と思った瞬間には駅に向かって走り出していた。
ここに行かなくては、と思考が掌握される。
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すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます!!! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです!夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…!キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…!新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします!これからも陰ながら応援しています…! (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……!!これからも更新頑張ります〜! (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年6月9日 18時