しんらいと無知:調香師 ページ24
「ねぇ、私って嫌われてるのかしら。」
ポツリと呟く彼女にどう返せば良いのか分からず返事に困っていると、諦め気味に「良いの。本当は気づいてるから。」と微笑まれた。
悪いなぁ、と思いつつ本へ視線を切り返すと、「私だって好きでこんな所にいるんじゃないの。」と語り始めた。
「皆は私の事を冷たい女とか、アバズレとか言うけどね、きっと私を知らないんだわ。この服だって男性方を誘惑する為に着てるんじゃない。姉が初めて私の為に見繕ってくれた服で…」
「へぇ。」
「それにね、私は女性方に恋人を寝取る女だって言われてるのよ。キスもまだなのに。香水でさえ気取り屋のお嬢様だって呼ばれるの。皆は私の職業をご存知でないのかしら。それとも興味無いだけ？」
「興味無いんだと思う、思いますよ。」
そうよねぇ、と笑う彼女が何だか痛々しいくらいに悲しそうで、思わず「私は興味ありますよ。」と言ってしまった。
「ありがとう。」と優しく返され、思わず微笑む。
喧騒から解放され、血の匂いも泥の匂いもしないこの部屋で本を読む。
その横で彼女が話す。これ以上幸せな事があるだろうか。
「…私も小さい頃はそうやって過ごしてたわ。1人で本を読んで、たまに絵を描いたの。香水も作った。誰とも話さず1人でね。」
「…ウィラさんが？」
「そうよ、いつも姉の影に隠れてたの。彼女は綺麗で楽しい人だったから。彼女がいれば、私なんて、あの家に必要なかった。」
遠くを見詰めながら話す彼女の顔を見る。
やっぱり何処か悲しそうに見えるけど、お姉さんの話をしている時だけ羨望の色が混じってる様に見えた。
「それに比べて私はダメね。大人になっても罪を擦り付けられ、知りもしない人から悪者にされる。反論しない。されるがままよ。」
姉だったら、と呟く彼女に思わず「ウィラさんはウィラさんですよ。」と言葉をかける。
泣きそうな目で私の方を向く彼女と目を合わせてずっと言いたかった事を口にする。
「私はウィラさんを信じてます。こんなに良い人なんですから、もっと自信を持ってください。」
「…ありがとう。でも私には頼れる人なんていないわ。きっと、皆離れて行っちゃうわよ。」
「わ、私が居るじゃないですか。」
「…貴女が？」
段々と彼女の目が辛そうに歪んでいく。
「じゃあ聞くけど、」
「私の名前、分かる？」
次は私が口を開く。
「ウィラ・ナイエルさんです。」
そう言うと、彼女は涙をこぼし、笑って答えた。
「それ、殺した姉の名前なの。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 480人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すぴお - 待って最初の弁護士で腹筋ログアウトしました最高ですアザスありがとうございます応援してます！！！ (2020年4月25日 0時) (
レス) id: 5763911021 (このIDを非表示/違反報告)
お豆腐(プロフ) - ちょっとダークな雰囲気で世界観めっちゃすきです！夢主に感情移入しすぎて痛いw (2020年3月4日 1時) (レス) id: 4dd9818095 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 金魚丸さん» どえぇええありがとうございます………………ありがとうございます…………。喜んで書かせていただきます………… (2020年1月26日 19時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
金魚丸(プロフ) - はじめまして…！キャラの特徴だったり世界観だったりとっても大好きです…！新ハンターのアンさんが夢主ちゃんにだけめちゃくちゃ優しい…みたいなお話が見たいです、もしリクエスト受付中であれば是非お願いします！これからも陰ながら応援しています…！ (2020年1月26日 15時) (レス) id: 0008ec1201 (このIDを非表示/違反報告)
もゆう(プロフ) - 綵宇さん» ぁああありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです……タダでは起き上がらない精神の持ち主じゃないと楽しい荘園ライフを送れないと思って意識して書いたので気づいて頂けて感激です……！！これからも更新頑張ります〜！ (2019年12月26日 21時) (レス) id: 2412a78293 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もゆう | 作成日時：2019年6月9日 18時
