憧れの先の*ゴッサム* ページ25
華やかなワンピースに綺麗な色のハイヒール、年相応というには少し濃いめのメイクに傷一つない白い肌。
あぁ、良いなぁ。少女という言葉はきっとこの方の事を指すんだわ。
反して水溜まりに映る自分の姿を見てみると、真っ黒なスーツに革靴、皮の手袋。メイクなんて以ての外。
唯一の救いは首から上しか肌は出ていない事。下にある無数の傷を隠せるから。
「荷物持ちのくせに。」
「申し訳ありませんソフィア。」
「何だか呼び捨てにさせるのも飽きたわ。もう戻して良いわよ。」
「はいソフィア様。お車でボスがお待ちです。」
来なくて良いのに、とぶつくさ文句を呟く彼女の後ろに付いて歩く。
彼女の靴が地面を蹴る度に鳴る心地の良い音が大好きで、毎日この音を楽しみに迎えに付き添っているくらい。
「A。」
「はい。」
「貴女って私と同じ歳?」
「いいえ、私の方が2歳上です。」
「ふぅん。それなのにそんな格好しているの。可哀想ね。」
可哀想ね。と言う瞬間の彼女の顔ったら!
この世の性悪を集めて固めたような悪意に満ち溢れた顔。
私の事を無能だ何だと罵っておきながら手元に置いておく理由というのはきっとこれなんだろうな。お前なんぞ3秒で殺せるってのに。
だが自分の命が惜しい賢い私は、この辛い時間を何とか乗り越えて、一人立ちできる歳とキャリアを積んだらきっとこの組織を抜け出してやると心に誓った。
が、それより早くこの辛い時期は終わりを迎えた。
彼女はゴッサムを出るという。
すなわちドン・ファルコンの手が及ばない場所に行くと。
そのまま野垂れ死んでしまえと願った。叶わないだろうけど。
彼女が居なくなってからすぐに配属を変えられ、ある時はフィッシュ・ムーニーの用心棒及び傘持ち(この後すぐ新人が入って仕事はナシに)、ある時はお抱えの殺し屋ザーズと仕事をした。勿論無能警察共からの借金を取り立てたりもした。
現在28歳。
フィッシュ・ムーニーがペンギンという男に殺され、マローニも死に、ドン・ファルコンが引退した。
全てが変わった日だったのをよく覚えている。
結局殺しの仕事に就いてしまった私は、生きる為の『選択』をした。
新しいボスの元を尋ねると、いつかに見た顔の小柄な男が微笑んで待っていた。
「やぁ、荷物持ちさん。」
「…まさか、傘持ちの?」
「えぇ。…あの時はお互い若かった。さ、どうぞ。」
「はぁ…。失礼します。」
好きだったハイヒールで歩けば「素敵な靴だ。」と褒められた。
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岡P(プロフ) - 初めて読ませて頂きました。どのお話もとても面白く楽しませてもらいました。これからも素敵な作品楽しみにしています。 (2022年3月9日 21時) (レス) id: eaa010ae17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2020年4月30日 21時