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ぎゃあ。
突然至近距離で背後から声がしたもんだから、思わず飛び跳ねてしまった。
こればっかりは後ろ歩きで前を向いていなかった私が悪いのだが。
「あー…驚かせてすまない…が……もしかして娘か?」
「そう見えるか?」
「全く。」
「長官、トニー・スタークですよ…!敬語…!」
「おや、中々世間が分かっている子じゃないか。彼の背中になんか隠れていないで出て来れば良いのに。」
ハハハ、と気の良い笑顔を見せる。
その笑顔がテレビと全く同じで感動してしまった。
「こんにちは、スタークさん。後でサインを頂けますか。」
「勿論。こんなに可愛いお嬢さんの為なら何枚でも。」
「やったぁ…キャ、キャプテン・アメリカ…!!」
「やぁフューリー、と…えっ、娘…??」
「そう見えるのか?」
「全く…」
先程のスターク同様、背後の私に一瞬だけ戸惑いを見せたものの、すぐにまた凛々しい顔付きに戻って「今後の事について少し相談が…」なんて難しい話を始めた。
「オイキャプテン、せっかくの僕が霞んでしまっただろう。」
「Mr.スターク…何かに付けて僕にいちゃもんを付けるのはよしてくれ。」
「いいや、いちゃもんなんかじゃないね。現にこのお嬢さんの輝く瞳は君に釘付けなんだ。どうしてくれる。」
「あっ、いや、違くて…し、知り合いがキャプテンの大ファンだから…つい…」
みるみる内に顔が不機嫌になっていくスタークに焦って弁明を始めると、彼はチラリと目線だけこちらに寄越し、次の瞬間パチリとウィンクをされた。
なるほど、彼に多くの女性ファンがつくのも納得だ。
「キャプテン、責任取って彼女にサインをあげるべきじゃないか?」
「なんの責任だよ全く…大体、現代の子は僕のサインなんか欲しくないだろう。」
「ほし、欲しい!…です。」
「…分かった、書いたら彼に渡しておくから。」
「僕は郵便屋じゃないんだが。」
去っていく青い背中に彼が嫌味っぽい一言を放つ。
「しっかし今の時代『いちゃもん』なんて言葉使うか…?」とぼそりと呟いたのも聞き逃さなかった。
「さて、お嬢さん。先の予定は?」
「特に無いです。」
「なら丁度いい。長官、彼女を借りても?」
「午後には返せ。」
「あぁ勿論。『僕にとっての』午後には返すよ。この珍しい物好きの彼女をバナーにも見せてやりたくってね。」
ついでにサインも、と彼にニッコリと微笑まれてしまっては従わざるを得ない。
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アリス(プロフ) - 愛が重いバッキーを書いて欲しいです! (2023年1月23日 22時) (レス) id: 725213f986 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2019年10月6日 16時