○いい人 tn ページ38
授業が終わり放課後。
私は空のジョウロを持ち、水道に来ている。
園芸部に所属しており、こうやって週に何度か、水やりをしに来る。
今日は私の日だ。
『よいしょっと……』
ジョウロを持ち、花壇まで歩く。
途中、キラキラしている女子グループとすれ違った。
その時、私は彼女達の会話が聞こえてしまう。
「トントン君と××さんって似合うよねー」
いつ聞いても、悲しくなってしまう。
書記長さんは私の憧れであり好きな人。
だから、傷ついてしまうのだ。
私は彼女達から離れるため、思いジョウロを抱え走った。
『はぁはぁ………あ……』
体力があまりないから、とても疲れた。
でも、花壇の近くに来るとヤンキーっぽいグールプがいた。
よく見ると、花は少し踏まれている。
『どうしよう……』
今すぐ注意したいが、そんな勇気はない。
見て見ぬふりをしても、せっかく育てていた花達を見捨てることになる。
私はどうしようかと、しばらくオロオロしていた。
「おい、お前ら」
花壇の近くで、先ほどの人達とは違う声が聞こえた。
見てみると、書記長さんだった。
「あ？なんやねん」
ト「お前ら、そこは花壇や。気づかんかっんか？」
「はっ、ただの花じゃねーか」
そう言い、花を踏みつける。
部員の皆で、一生懸命育てたのに……
私は泣きそうになった。
書記長さんはさっきより声を低くし、こちらに近づいてきた。
ト「いい加減にせぇ！！それらの花はなぁ…！」
『…きゃあ！？』
いきなり腕を引かれ、前に出される。
そして、書記長さんが男子に怒る。
ト「A達が一生懸命育てたんやぞ！！それなんに、なんも思わんのか！！」
「わ、悪かったって…」
「す、すまん……！！」
男子達はそそくさと去っていった。
私はただ、呆然としていた。
後ろから肩を叩き、書記長さんは私に申し訳なさそうに言った。
ト「早く対処できんくてごめんな…」
『い、いえ…追い払ってくれただけでも助かりました！』
ト「でも……」
書記長さんは花を見る。
花は一部、ぐちゃぐちゃになっていた。
私は心配をかけないためにも微笑む。
『これぐらい、いつもの事ですよ』
ト「え…そうなん……？」
『はい、皆さんは花なんて雑草と同じ扱いですよ』
花の近くにより、しゃがむ。
今回は、前よりまだマシな方だ。
全滅するより、断然いい。
私はぐちゃぐちゃになった花を触る。
書記長さんは、私を見ながらこれ以上何も喋らなかった。
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