【wrwrd!】some storys (ページ36)

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▲農民 ht ページ36

先祖代々受け継がれてきた畑。
私はそこでせっせと土を耕す。
去年は上手くいったから、今年も上手くいってほしいな。

『……ふぅ』

耕し、種を植え終えた。
でも、珍しく種が余ってしまった。
誰かにあげようと、私は村に帰った。
帰ってくると、村で唯一の憩いの場に人が集まっていた。
何だろうと思ったが、私はその場所には行かなかった。

「なぁなぁ、幹部様が来てるんやって！」
「やだ、もっとちゃんと化粧すればよかったわ」

村の女性は騒いでいた。
幹部様…？あと、国で偉い人……？
私は今まで、学問をまともに受けていなかったためあまり詳しくはなかった。
そのため、私が出来るのは喋れる事だけ。
いい人なのか、悪い人なのか。
私には分からなかった。
お母さんやお父さんに聞きたくても、親は私を生き残させるために飢えた。
だから、私は周りより孤立していたりする。

ひ「ねぇ」
『……はい』

いきなり後ろから話しかけられた。
この村では見慣れない人だった。
それに、周りより服が綺麗。
この人が、幹部様という偉い人なのだろうか。

ひ「それ、何持ってるの」
『余った種ですが…』
ひ「もしよければ、俺にくれないかな？」
『まず、貴方の名前を教えてくれませんか？』

彼はとても驚いていた。
何故だろう、普通のことを聞いただけなのに。
不思議に思っていると、後ろから誰かに頭を押さえつけられた。

村長「すいません、こいつは教育がなっていなくて……」
ひ「大丈夫です」
村長「申し訳ないです。ほら、Aも謝れ！」
『で、でも私は…』
村長「いいから謝れ！！」

村長の言うことを聞かなければ、私の居場所を奪われてしまう。
周りから鋭い目つきで見られている。
私は怖くなり、泣きそうになりながら謝った。

『ごめんなさい……』
ひ「いいって。……確か、Aだっけ」
『はい、そうです』
ひ「ね、俺のそばにこない？」
『え……？』
ひ「あ、俺の名前はひとらんらん。ひとらんって呼んでね」

ひとらん様は私の手を掴み、そう言った。
私には理解出来なかった。
そばにくる？何をされるの？

『……や…』
ひ「ん？」
『嫌です！！ごめんなさい！！！』

手を振り払い、私は逃げた。
昔、知らない人にはついて行かないって学んだ事がある。
だから、私は正しいよね？
私は家まで走り、息を整えた。

『あ……種…』

種を置いてきてしまったのを忘れていた。
でも、どうせ必要なかったからいいや。
私はさっきまでの事を思い出し、ただ怖がった。