○噂 ut ページ22
「鬱くんと××ちゃんって付き合ってたやんな？」
「え、○○ちゃんじゃなかったっけ？」
聞きなれた会話。
鬱くんはあの子と付き合っていたのは本当。
鬱くんが別の女の子と付き合っているのも本当。
でも私、見ちゃったから。
彼の本当の姿を。
そのせいで……
鬱「Aちゃーん！数学の教科書貸してくれへん？」
『いいよ……はい、これ』
鬱「ありがとう〜！今度お礼するな！」
…彼との関わりが出来てしまった。
癖なのかは知らないが、よく触ってくる。
出来る限り避けているのだが、やはり誤解は出来てしまう。
さっき騒いでた女の子達、私に近づいてくる。
「Aさんって鬱くんの事好きなの？」
『違うよ』
「嘘、どうせ鬱くんを奪おうとしてるんでしょ」
ケラケラと笑う周りの人。
どうせ言ったって聞いてくれやしない。
私は鬱くんの事好きじゃない。
ただの同級生としか見ていない。
彼も分かりきっているはずだ。
鬱「俺、Aの事気に入った。絶対落とすから」
本性を見てしまった日、彼に言われた事を思い出す。
私は好きにならない、そう言ったのに。
どうしてこんなに関わってくるのだろう。
これは数少ない友人に話すべきなのだろうか。
……昼休みに話してみるか。
今は放課後。
たまに鬱くんが「帰ろう」と誘いにくる。
いつも断るのが大変だった。
でも、これからは違う。
ゾ「Aー帰ろー」
『ちょっと待って…』
数少ない友人の1人、ゾム。
趣味の話が合うから仲良くなった。
久しぶりに話すから、会話は弾むだろう。
鬱「Aちゃん一緒に……ってあれ」
ゾ「大先生、これからずっとAと一緒に帰るんで」
やはり来た。
今はゾムが居てくれて心強い。
……2人でコソコソと話している。
あの2人は仲良かったのか？
私は全く知らなかった。
ゾ「A帰るで」
『え、うん』
グイッと手を引っ張られた。
ゾムは私と手を繋いでいることに気づいているのだろうか。
気にしないタイプなのか。
鬱「……ゾム」
鬱くんがこちらを睨みつけている。
どうせゾムが煽ったのだろう。
ま、気にしないでおこう。
だってこれからは楽しく帰れるのだから！
”ゾ「何やねん、はよ帰らせてや」
鬱「なぁ、俺の恋を手伝ってくれるんとちゃうんか」
ゾ「は？手伝うなんて言ってないで。だって俺、ずっとAが好きやったから」
鬱「嘘やろ！？っておい！」“
鬱「俺、ゾムに勝てるか…？いや、俺がAちゃんと付き合うんや！負けるもんか！！」
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