前からずっと ni ページ10
*
『兄さん、私に構え』
煙草を吸う兄さんの後ろ姿、それをずっと見続けるのは飽きたため抱きついた。
少し危ないのは分かってるけど、構ってくれないのは嫌だった。
「A、もうちょい待ってくれへん?」
『もう沢山待った』
「…てか、その足元にあるのはなんなん?」
『犬のぬいぐるみ』
兄さんが私に構わない間、私がずっと抱きしめていたぬいぐるみ。
私だって、乙女が好きなぬいぐるみは好きだ。
ギュッと力強く抱きしめていると、兄さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめんな、寂しい思いさせて」
『…別に。兄さんが忙しいのは分かっとるし』
「でもなA、こういうのは彼氏とかにするんやで?」
こういうの、というのは抱き着くことだろう。
私は兄さんの服を掴み、小さな声で言う。
『私が彼女じゃ、ダメ?』
兄さんは私が小さい頃から遊んでくれた。
1人っ子の私は年上の人と遊ぶのが楽しくて「兄さん」とずっと呼んでいた。
「…A」
『困らせてるのは分かってる。でも、私は昔から兄さんが好き』
恋心に気付いたのは高校生の頃、同い年の男子より兄さんの方がよっぽど魅力的だった。
でも、この気持ちが彼を困らせる。
そんなことは前から分かってたけど、私の目から何故か涙が出てくる。
『兄さん…前から、好きだった…』
「…あのな、A」
兄さんは私の名を呼び、背中をさすってくれる。
知ってる、兄さんは昔から優しいから、私が泣いたらこうやって慰めてくれた。
「俺ら、年離れとるで?」
『知ってるよ』
「俺、結構おっさんやで?」
『…そんなの、気にしない』
「…ほんまに俺が好きなん?」
『好きって、言ってるじゃん…!!』
顔を上げると、少し困ったような顔をした兄さんが視界に入った。
…あぁやっぱり、この恋は叶わないんだ。
そう悟った時、私は兄さんから離れた。
『ごめん、なさい』
「A」
『もう、こんな事、言わないから…』
「ちゃんと俺の話聞けや」
兄さんは私に近づいてくるので、私は思わず目を瞑ってしまう。
暫く瞑っていると、頬に柔らかい感触がした。
「俺は不安なんよ。こんなおっさんが若いAを幸せにできるか」
『兄さん…』
「でもA、お前が俺を求めたんや。やからちゃんと付き合ったる」
兄さんはそう言って、微笑んだ。
ーーー
いい兄さんの日でしたね(遅刻)
言い訳にはなりませんが、兄さんを書くの久しぶりでした。グダグダですみません……。
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こんにゃく - お疲れ様でした。とてもなめらかで綺麗な文章を書かれていて、読んでいてとても幸せでした。本当にありがとうございました。 (2019年5月17日 20時) (レス) id: 0fb3eb8127 (このIDを非表示/違反報告)
羅(ろう)(プロフ) - はるさん» 小説を読んでくださりありがとうございました。好きと言ってもらえてとても嬉しいです。これからも無理をしない程度に頑張ろうと思っています。今まで本当にありがとうございました。 (2019年5月15日 20時) (レス) id: 14801f692c (このIDを非表示/違反報告)
羅(ろう)(プロフ) - キヅキさん» 小説をいくつか読んでくださりありがとうございました。他の場所で巡り会える確率は低いと思いますが、キヅキ様のような優しい方に読んでもらえるように頑張ります。今まで本当にありがとうございました。 (2019年5月15日 20時) (レス) id: 14801f692c (このIDを非表示/違反報告)
羅(ろう)(プロフ) - 葉月さん» 最後まで見てくださり、ありがとうございました。リクエストをくださった時は本当に嬉しかったです。Twitterのフォロー申請は鍵垢なら全て通しているので、お気軽に申請してくださっても構いません。本当に、今までありがとうございました。 (2019年5月15日 20時) (レス) id: 14801f692c (このIDを非表示/違反報告)
はる - お疲れさまでした。小説、面白かったです!大好きです!これからも、頑張ってください。いつまでも、応援しています。本当にお疲れさまでした。 (2019年5月8日 3時) (レス) id: d3b8419922 (このIDを非表示/違反報告)
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