107.遭遇三秒前 ページ9
(リヒトside)
「あ、いっちゃった……」
目が合った男の人に口を開こうとした矢先、脱兎のごとく逃げられてしまった。
……笑い方が変だったのだろうか。そう思い、人指し指を頬に当てて口角を上げてみる。
「……ふぃふぇなふぃ…」
当たり前だ。自分の顔だもの、見える訳がないのだ。でもきっと、僕は上手に笑えていないのだろう。だって今まで笑ったことなんて数えるほどしかないのだから。
また自己嫌悪に陥りそうになって首を横にふった。いけない、僕は変わらなきゃいけない。そうしないときっと**とは会えない。何故かは解らないけれど、そんな気がするのだ。そのためにきっと「神さま」は僕をこの街に呼んだのだろう。
*
暫くふらふらと歩き続けると、目の前を影が物凄い速さで通りすぎていった。……動物、だろうか。
小さい影は木立の間をすり抜けるように駆けて行く。目的が在る訳ではないけれど、僕はそれを追い掛けてみたくなって足を速めた。
生い茂る森を抜けると、目に光が飛び込んできた。日の光を反射させてキラキラと輝く泉は溢れんばかりの水を湛えている。
「……綺麗…」
思わず、ほぉ、と溜め息が漏れた。
『しば……は、…戒し……きま…ょ…』
「……?」
泉に見とれていた僕の耳が、微かな声を拾う。
「誰か其処にいるの…?」
返す声は聞こえない。でも確かに今、声がしたんだ。
「ねぇ、誰かいるんでしょ?」
そう言って僕は、茂みを掻き分け中を覗き込んだ。
25人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零兎(プロフ) - 小説読んであらすじ見てきますー (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
零兎(プロフ) - [壁]_-)お久しぶりです。誰か居ますか? (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 更新します! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
神楽柚希.@じゅんは我の彼氏.(プロフ) - 猫田あみいさん» 教えてくださりありがとうございます…!!タイトル入れてきますねッ. (2016年5月31日 23時) (レス) id: f95df422fb (このIDを非表示/違反報告)
猫田あみい(プロフ) - 神楽柚希.さん» タイトルが抜けてますよヽ(´o`; (2016年5月31日 20時) (レス) id: 26aa867e92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ