104:幼児退行 ページ6
「や!しぐれ、にんげんきらい!」
「シグレ様…ハァ…そんな『ピーマンキライ!』みたいな感じで言われても……」
人間の姿に変化した俺の膝の上には五歳児が座っており、俺のからだにぎゅ〜〜っ、と抱きついている。
シグレ様は信仰してくれる人間の多さによって力の強さが左右される。今は俺とエネルギーをわけあっているから存在できる。だが、それにも限界がある。ので、時たま存在を小さくしなければ消えてしまう。今日がその時なのだ。
「にんげんはしぐれをかみさまってよんだくせに、わるいばけものだとか、まものとかよんだ!
だからにんげんはきらい!」
エメラルドブルーの大きな瞳を潤ませ、目じりにたっぷりと涙をためている。シグレ様の言うことは紛れもない事実だ。人間たちはシグレ様を『世にも美しき月の神』『慈悲深き月光の男神』と崇め、祀った。
しかし、努力もせず、神頼みばかりしていた一部の欲にまみれた人間たちが己の欲望を叶えなかったシグレ様を悪神、化け物と罵り、シグレ様を祀っていた神殿、『月の宮殿』を破壊し、シグレ様の神体を傷つけたのだ。顔に大怪我をなさり、心身共に傷つけられたシグレ様は心の扉を固く閉ざした。
そしてシグレ様は夜の間人間が絶対に安全に暮らせないように呪いをかけた。今は太陽と昼間を司る弟神の力で若干弱まってはいる。だが、血の滲むような努力をしてきたシグレ様とは違い、努力もしなかった半端者の奴にこの呪いがとけるわけがない。
今はシグレ様が弱体化されているからいいものの…シグレ様が力を取り戻されたら…まあ俺には関係無い。俺はシグレ様を守り、命を繋げるためにあるのだから。俺もその役目に誇りを持っている。
「大丈夫ですよ。シグレ様。あなた様は俺がお守りいたします。」
シグレ様はふ…と微笑んだ。次の瞬間、どろん、という音と煙りと共に現れたのはまさに月光を擬人化した様に美しい青年。月の如き銀の髪に全てを見透かす様なエメラルドブルーの瞳。健康的な白い肌に紺の神官の様な服がとても似合う、俺の主。
「宜しく頼むぞ?私の護衛のオオカミくん。」
彼はくっくっくっ…と口を服の長い袖で隠しながら優雅に笑った。
25人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零兎(プロフ) - 小説読んであらすじ見てきますー (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
零兎(プロフ) - [壁]_-)お久しぶりです。誰か居ますか? (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 更新します! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
神楽柚希.@じゅんは我の彼氏.(プロフ) - 猫田あみいさん» 教えてくださりありがとうございます…!!タイトル入れてきますねッ. (2016年5月31日 23時) (レス) id: f95df422fb (このIDを非表示/違反報告)
猫田あみい(プロフ) - 神楽柚希.さん» タイトルが抜けてますよヽ(´o`; (2016年5月31日 20時) (レス) id: 26aa867e92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ