126:魚の食べ方、真っ白なふわふわ ページ28
(リヒトside)
「魚、食べます?鱗やワタはとってありますけど」
「うん、食べる」
興味津々に魚を見つめていると蓮が不審そうに此方を見た。
「なんですか?」
「え、あの、僕……魚を見るの、初めてだったから」
「え!?初めてなの?」
もぐもぐと咀嚼していたシルヴェスターが目を瞬かせる。僕の知っていた魚は羽が生えていて空を游いでいたけれど、此処の魚はそうではないらしい。……まあ、たぶん、僕の知っていた魚が例外なんだと思うけれど。
「うん、初めてだよ。魚って美味しいの?」
「好みは人それぞれですが、私は美味しいと思いますよ。ブランは食べられませんがね」
木の実を頬張るブランの頭を軽く撫でて微笑む蓮。その横でシルヴェスターは無言でがつがつと魚を貪っていた。
「……えと、魚って、そのまま食べるものなの…?生でまるごと食べるの…?」
「……いや、貴方が食べるのであれば出来るだけ火を通したり裁いたりしてもらったほうがいいとは思いますけど…」
「もう!別に生で食べたっていいでしょ!ぼくは生のほうがいいのー!それにそこのリスだって生で木の実食べてるのにっ!」
頬を膨らまし抗議の声をあげるシルヴェスターに、蓮と顔を見合わせて笑う。
何だ、こんな顔も出来るじゃないか。
出逢った当初とはまるで違う蓮の様子になんだか心が温かくなった。
「…そういえば。リヒトさんは前からこの街に?」
「ううん、僕は今日着いたんだ。気付いたらいつの間にか教会の前にいてね」
「驚きました。てっきりずっと此処に住んでいるのかと思いましたよ」
「あっ、ごめんね?もしかして馴れ馴れしかった?」
「…まあ、いい意味で、ですけど…」
「蓮ー?何か言ったの?ぼく、声が小さすぎて何にも聞こえなかったよ」
シルヴェスターが蓮に問う。僕も実を言うと聞こえなかった。まあ、の後に蓮が何を呟いたのか。
シルヴェスターは蓮にまとわりついて教えて教えて、とねだっている。身を捩らせ逃げようとしながらも蓮の顔には笑顔が浮かんでいた。
セラみたいに、誰かを街に招くことは出来なかったけれど、僕は少しでも蓮に居場所を作ってあげられただろうか。
「ふふっ、そうだったらいいなぁ…」
「リヒト!リヒトもこそこそ噺してぼくに意地悪するの!ひどいよ!」
蓮から離れ突進してきたシルヴェスターを受け止める。地面に押し倒されて土の上に倒れ込んだ。
何だかとっても、胸の奥があったかい。
127:どこにも居場所はない→←125:見えない枷と消えた光。
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零兎(プロフ) - 小説読んであらすじ見てきますー (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
零兎(プロフ) - [壁]_-)お久しぶりです。誰か居ますか? (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 更新します! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
神楽柚希.@じゅんは我の彼氏.(プロフ) - 猫田あみいさん» 教えてくださりありがとうございます…!!タイトル入れてきますねッ. (2016年5月31日 23時) (レス) id: f95df422fb (このIDを非表示/違反報告)
猫田あみい(プロフ) - 神楽柚希.さん» タイトルが抜けてますよヽ(´o`; (2016年5月31日 20時) (レス) id: 26aa867e92 (このIDを非表示/違反報告)
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