【企画小説】忘却の街.third (ページ21)

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119:北の森にてページ21

(蒼輝side)

カサッという音がした。猫がいた。

「どうした、猫。教会に行ったけれど特になんの役にもたててないし自分は奪うことしか出来ないと思うから神に祈りを捧げて怪我人を放置してきたみたいな顔をして」

「…ほう。当たりじゃ」

「しゃべる猫…ああ、ケット・シーか。結構強いよなあの怪異。ま、俺の親友の才能には負けるだろうが」

「お主は何者じゃ？妖しい狐面などをした蒼よ」

「なんでもねぇよ。あえて言うなら死神だ。とはいえ、元は人間だしな…よっと」

俺は腕から妖刀を取り出した。妖刀…《火鮫》。なんでも切れる刀である。

「で、これが俺が死神になった原因の刀だ。誰からか貰った…ああ、そうだ叔父からだ」

「お主も忘却の街に住んでおるのか？」

「忘却の街？ああ、そういやそんな名前だったっけ、此処。一応住んでるんじゃね？誰とも会った事ねぇけど…図書館は別だが」

森から出てねぇし、俺。面倒くさいからな。図書館だけは行った。
ランツェルリ設立図書館だっけか。あと三毛猫をモフッた。

「モフッていいか？ケット・シー」

「儂の名はネーロじゃ。別に構わん…ただし、お主の名前を教えろ」

「俺か？俺は蒼幹群青(ｱｵﾐｷｸﾞﾝｼﾞｮｳ)だ」

「本名をじゃ」

「ちっ。蒼輝葵衣(ｱｵｷｱｵｲ)だ。他人の前では言うなよ、蒼幹で呼べ」

「よかろう。撫でるのは頭だけじゃぞ」

「へいへい」

その黒猫、ネーロの毛並みは柔らかかった。もっとモフモフしたい。

「俺、これでも動物にはなつかれるんだぜ」

何の話してるんだっけ？まあいい。