【企画小説】忘却の街.third

101:赤と青 ページ3

トートside


「そういえば、柏木。キミはさっき僕に対し、名前を教えないような素振りを最初見せていた。……なら、他の人の前ではキミの名前は呼ばない方がいいのだろうか？」

「……ま、そうだな。彩とかは別だけど」

「彩…？ああ、人間さんか。柏木と人間さんは…いや、やっぱなんでもない。質問はしないことにする」

「聞かないのか？トート君そういうの聞きそうだけど？」


柏木は意外そうな顔で見てきた。これは失礼と思っていいのだろうか？
………別にこのくらいなら言っても構わないか。


「いや」


僕は答える。


「別に構わない。知っても知らなくても、同じことだ。それに」


人の秘密事に、そう簡単に触れるべきではない。そしたら大惨事が起きたりもする。
頭の中に、赤が浮かんだ。
血の赤。
肉の赤。
炎の赤。
真っ赤な空に死体が写っている。
そしてそこに現れた──青色の彼奴。
──流石にあれは、特殊だろうが。


「僕はそれで過ちを犯(ｵｶ)した事がある。…だから、聞かない。聞いたりしない」


グッと拳を握り締める。そうしないと泣いてしまいそうだった。
あれは、僕のせいだから。

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