【企画小説】忘却の街.third (ページ17)

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115:もう辞めましょうページ17

(永久仁side)

「……迷っても、いいんじゃないかな」

リヒトと名乗ったその人が言った言葉に、私は戸惑いました。
迷っても…いいんですか？

「寄り道しないと、見付けられないものもあるよ。僕が蓮に出逢えたみたいに。迷うことも、きっと大事だよ」

優しい言葉を言う彼に、私は言葉を発する事が出来ません。ブランは心地良さそうにリヒトさんの傍にいます。
ブランがなつくのはいい人だ、とブランが言っていましたが私がいい人ではないので信憑性は薄いです。
それでも、彼はいい人そうでした。

「それに、迷ったらきっと誰かが見つけてくれるよ。そうしたらまた新しい出逢いがあるでしょ？」

そんなこと…気付かなかったです。思わなかったです。迷ってもいいだなんて。
その人が私に向き直った時、茂みから白くふわふわとした、北極狼のような動物が出てきました。

「……新しい出逢いだ」

新しい、出会い。
…ブランが少し怯えていますが。

「大丈夫ですよ、ブラン。アナタに危害は加えないでしょうから」

『どうして分かるの？蓮』

「敵意を感じません。ブランも分かるでしょう？」

『…そうだね』

ブランはリヒトさんの肩から降り、私の元へ帰ってきました。定位置は帽子の上か肩ですが、今は肩の気分みたいです。

「こんにちは、君の名前は？僕はリヒト。リヒト・ブラウ」

「私は、永久仁蓮です。こっちのリスはブラン」

白銀の美しい狼は名前を名乗りました。シルヴェスター・スノー、という立派な名前を。
普通に喋りました。

「魚、食べます？鱗やワタはとってありますけど」

「うん、食べる」

人と、交流しよう。１人でいるのはもう辞めましょう。
強く、なりましょう。