114.寄り道と新しい出逢い ページ16
(リヒトside)
「…なんですか?私に近寄らないでください、アナタのためにも」
そう言って身を翻し立ち去ろうとした女の人だけれど、傍らにいた小さなリスは僕の側へ寄ってきて肩へと駆け登った。
「あっ、ブラン…!何でそちらに行くんですか!」
「…ブラン…?」
そっと名前を口にすると、小さなリスは僕の頬に尻尾を擦り付けてくる。
「ふふっ、くすぐったい…!ブランって君の名前なの?僕とそっくりだ」
「……」
「僕の名前はリヒト。リヒト・ブラウだよ。…あ、そういえば逃げようとした君は?」
微笑んで答えを待つと、女の人は観念したようにその場に腰を下ろした。
「永久仁蓮、です。…なんでブランがそちらに行ってしまったかは分かりませんが、ここに居座るつもりならおすすめしません。……私の側にはいない方がいいですから」
この街に来るのは皆訳ありの人ばかり。
少しだけ学んだことが脳裏に甦る。
でも僕はその言葉を放ったまま自分の胸に仕舞えるほど、たぶん器用じゃない。
少しだけでも、近づきたい。
「……どうして?」
「迷ってしまうから、です」
迷ってしまうから。僕にその意味は分からない。
でも、そう呟いた蓮の顔に諦めたような影が射したのはわかった。……だって、昔の僕とそっくりだったから。
誰かに近付きたい、でも近付けない。
**に出会う前の僕自身を見ている様だった。
「……迷っても、いいんじゃないかな」
「…え?」
「寄り道しないと、見付けられないものもあるよ。僕が蓮に出逢えたみたいに。迷うことも、きっと大事だよ」
「……」
「それに、迷ったらきっと誰かが見つけてくれるよ。そうしたらまた新しい出逢いがあるでしょ?」
蓮の方に向き直った時。
「クゥン」
真っ白なふわふわした動物が、僕らを見詰めていた。
ほら、やっぱり。
「……新しい出逢いだ」
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零兎(プロフ) - 小説読んであらすじ見てきますー (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
零兎(プロフ) - [壁]_-)お久しぶりです。誰か居ますか? (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 更新します! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
神楽柚希.@じゅんは我の彼氏.(プロフ) - 猫田あみいさん» 教えてくださりありがとうございます…!!タイトル入れてきますねッ. (2016年5月31日 23時) (レス) id: f95df422fb (このIDを非表示/違反報告)
猫田あみい(プロフ) - 神楽柚希.さん» タイトルが抜けてますよヽ(´o`; (2016年5月31日 20時) (レス) id: 26aa867e92 (このIDを非表示/違反報告)
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