【募集企画】忘却の街

《小説》わたしのかみさま ページ24

めがさめたとき、 わたしは いっさい 「私」 のことを おぼえていなかった。

＊

しんだい から からだをおこし、 おもむろに めを こする。

めを つむるまえ、 はたして わたしは なにを していたの だろうか。

そんな かんたんな ことが、 おもいだせない。きおくに もやが かかったかの ように、 かこの ことが なにひとつ おもいだせ ないのだ。


『聖アナスタシア様！』
『倪下がお目覚めだ！』
『復活の女神が目を覚まされたぞ！』


「…あなすたしあ」


どうやら、わたしの なまえ らしい。
ひざまづいた たくさんの てんしたちは、 わたしと めを あわせようとも しなかった。

ほどなくして わたしは しった。
みな、 わたしを とおして、わたしで なく 「かみ」 を みていると。

もし ほんとうに 「かみ」 が いるので あれば、 わたしが なにもの なのか おしえて くださる だろうか。

＊

たいくつな ひびが すぎていく。
まだ 「かみ」は わたしを おしえて くださらない。
しんでんの じしつで べっどに こしかけて いると、 へやの すみに ふるびた にっきを みつけた。


○月○日
今日は友達が出来た。夜中に探検をしていたら見つけて友達になった。名前は＊＊＊。
＊＊＊も夜の探検が好きなんだって！
今度は一緒に探検したいなぁ。

○月×日
今日は＊＊＊を天体観測に誘った。
星には興味がなかったみたいだけど
いっぱい説明したらわかってくれたって！嬉しいなぁ！
あ、そういえば今日は流星群がすごくきれいだったんだ！


にっきの ぬしは おんなのこ らしかった。
＊＊＊、 という ともだち は おとこのこ だろうか？
ふたりは とても なかが よさそうだ。

あがめ、 たてまつられる ことで ともだち など いなかった わたしは、 この にっきを よむのが たのしみに なったのだ。


あるひ、いつもの ように ぺーじを めくって いくと、 いちめん まっくろな ぺーじを みつけた。

ぐちゃぐちゃな もじは たしかに おんなのこの ひっせき だった。
どうしたと いうのだろう。

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