79 ページ31
────
──
.
今日は待ちに待ったバーバラの公演日。公演は聖堂前広場で夜に行われるのだが、私は少し早くモンド城にやってきた。何度 来ても飽きない素敵な街だ。
太陽がぽかぽかと気持ちがいい。いい散歩日和だなあと歩いていると、ベンチでうたた寝している人がいた。よく見るとそれは夜に公演を控えているバーバラだ。いつもと髪型が違うのはそのためだろうか。そっとしておいてあげたいが、もしもリハーサルなどがあって間に合わなかったら大変だ。
「 バーバラ、起きて 」
後ろからとんとんと肩を叩くと、バーバラは寝惚け眼を擦りながらこちらを見上げて……そして、お互いにピシャリと硬直した。私がバーバラだと思っていたその人は全く知らない赤の他人だったからだ。人違いをしたらしく、顔が赤くなっていくのが分かる。
「 ご、ごごご、ごめん。友達に似ていたから間違えた 」
「 ん…？ もしかして君は、A？ 」
「 えっ。どうして私のことを知っているの 」
バーバラによく似た女性は、西風騎士団の代理団長のジンと名乗った。彼女はガイアとリサから私のことを聞いていたらしい。変なことを話していないといいのだが( 特にガイア )。
立っているのもなんなので、私はジンの隣に座ることにした。
「 そういえば、君はさっき私をバーバラと間違えていたが……。その。に、似ているだろうか？ 」
「 うん。貴方が振り向くまで私はずっとバーバラだと思っていた 」
「 そうか。似ているのか… 」
ジンは照れくさそうに頬をかいている。グレーブルーの瞳に、艶のあるゴールドブロンドの髪はやはりバーバラに似ている。血縁関係でもあるんじゃないかと思ったが、そこには踏み込まないでおこう。
「 私は今日、バーバラの公演を見に来たんだ。ジン、貴方もどう？ 」
「 公演？ バーバラは今日 公演をするのか？ 」
「 うん。招待された。けど、貴方は忙しいかな 」
「 いや、私は… 」
ジンは何やら考える素振りを見せると、決心したかのように勢いよく立ち上がる。
「 よし、私は今から溜まった書類仕事を夜までに全て片付けよう。教えてくれてありがとう、A。また夜に！ 」
「 ん？ うん、またね、ジン 」
何やら張り切った様子で風のように駆け抜けていったジンを見送り、私も腰を持ち上げた。夜までもう少し時間がある。モンド城の観光をしよう。
.
──
────
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 423人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゅた - 本当に面白いです！！きゅんきゅんして見てます！！！更新頑張ってください！ (2023年2月13日 12時) (
レス) id: 7bb104c929 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 楓さん» うわあ！お返事遅くなりました！ありがとうございます！！その辺も書いてきますよ〜✍🏻 (2022年12月29日 19時) (レス) @page38 id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ダァッ！！！！続きが気になります、、、主ちゃん一体何者なんだ、、 (2022年12月11日 13時) (レス) @page45 id: 4c22f265eb (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - ふわなさん» こんにちは！コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。しばらく毎日更新ですので良かったらまた覗きに来てください。 (2022年11月22日 18時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - コメント失礼します！お話がとっても素敵で読むのが止まりませんでした！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2022年11月22日 13時) (レス) @page14 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りり | 作成日時：2022年11月21日 3時
