【東卍】花垣兄,通称”族潰し”

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side.タクヤ
何も減っていなかったことに安心しているとAさんは俺の頭を撫でながら

『お前大丈夫か？って足擦りむいてるじゃねぇか！』

と言った。

さっきまであんなに強かった人がこんな擦り傷程度でアワアワしている。するとAさんは何かを閃いたようにしてしゃがみ俺に背中を向けた。

『ヨシ,おんぶだ。俺に乗れ,家近いから手当してあげる』

乗ることを戸惑った俺。だけどAさんはいつまでたってもその体制のまま。

「じゃ,じゃあ……」

Aさんに乗ると,Aさんは『ちゃんと捕まれよ』と言って立ち上がった。

一気に目線が高くなった。

Aさんは歩き出した。


・


『お前,名前は？』

「え？」

『名前は？』

Aさんにおんぶされ進みながら質問される。

「や,山本タクヤ」

俺が名前を言うと

『そっか,タクヤか。すげぇなお前強ぇよ。』

”強い”

体の弱い俺が初めて言われた言葉だった。
その言葉が嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

『俺さ,年の離れた弟が居てさ,そいつさ”ヒーロー”になりたいって言っててさ。なのに転んだだけで大泣きするんだよ』

そう言いながらAさんは微笑んだ。

『ごめんな,俺さ花垣Aって言うの。』


その時にやっと気がついた。


「え。花垣って……タケミチのお兄さんですか？」


『え！？じゃあもしかして,タクヤって……武道からよく聞いてるよ。仲良くしてくれありがとうね。』

驚いた後,照れたようにしてAさんは言った。


『あ。このこと武道にはナイショだよ,武道また泣いちゃうから。』


Aさんと話した時間はとても楽しかった。


その後手当してもらって武道と遊べたけど,Aさんのことを忘れたことは無かった。


そういえば,昔は表情がコロコロ変わってたな,




幼い俺……

いや今の俺にとってもAさんはヒーローだ。



実際,今心が折れてた俺たちに救いの手を差し伸べてくれた。

やっぱ,Aさんは最高にカッコイイ。

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