或る夜の生き残りゲーム 『開演』

2日目　“救済” ページ8

それは、夜のことだった。

代わり映えのしない、いつもの夜。

代わり映えのしないはずだった、いつもの夜だったはずの何か。


＿＿へえ。彼/彼女、悪魔だったんだ。

＿＿＿恐怖はない。

＿＿＿＿＿ヒトゴロシは、久しく地獄へ送られるだけ。

＿＿＿＿＿それは、わかっていた。

＿＿＿＿＿たまたま、今日だっただけの話。



＿＿＿＿＿それでも、自分にはまだ“できること”がある。


腹から生えている刃を引き抜き、うつ伏せのまま、指を這わす。

“…………………”

悪魔、と呼ばれた人物は、無言で赤い文字を踏みつけて、そのまま足を横へ滑らせる。
誰にも届かぬメッセージ。
何を記していたのかは、もう、誰にもわからない。


ゲッカ「……さきに、むこうでまってます。」


意味深な、誰にも届かぬささやきは、夜に溶けていった。


後には、赤くかすれた床と、安らかな彼女の死に顔だけが残っていた。

ーーー今宵の犠牲者は、ゲッカです。

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