名前ㅤお別れ ページ9
『ん？どうした？』
「…名前で、呼んでいただけませんか？」
ギュッと目をつぶって、耳に集中する。緊張が、握られた手にでてる。
『いいの？オレは“年上の男”なのに』
今までで1番優しい声。私は…
「景光さんなら、大丈夫です」
ハキハキと答えてみせれば、向こうでふっ、と笑った音が聞こえた。
『ありがとう。Aちゃん、でどうかな？』
嬉しくて、握った手を開いて口元を覆う。
「ありがとうございます、景光さん！」
『これくらい、お易い御用さ。それじゃあ、また今度』
元気に返事をして、電話が切れるのを待った。
目元を手の甲で拭い、私はいつものように出かける準備をした。
松田刑事の病室で、私は2人を待った。
家から持ち出した本を読み進めていると、ガラララ、と病室のドアが開いた。
「Aちゃん、お待たせ。道中で彼と会っちゃって」
「あれ？佐藤もAちゃんの事知ってんの？じゃあもしかして、本当に2人同時に呼び出されたってことか」
笑う萩原刑事。怪訝な顔の佐藤刑事。
私は椅子から動かずに、本を閉じて手元を見つめた。
やっぱり、実際に男の人に会うのは怖い。
それを分かってか、萩原刑事はドアを閉めると、私と反対―部屋の奥、つまり松田刑事を挟んで反対側に椅子を持っていき、座った。
「それで、話って何かしら？」
佐藤刑事が優しく聞いてくれる。
私は佐藤刑事を見つめたまま、2人に向かって話をした。
「……そう。それじゃあ、暫く会えなくなるのね」
「はい。高校入学の時には戻って来るつもりです」
目が合うと、優しく微笑んでくれる佐藤刑事。
私達の会話を、何も話さずに静かに聞いてくれる萩原刑事。様子を見ようと萩原刑事を振り向こうとした時、携帯が震えた。
開いてメールを見ると、萩原刑事からのメールだった。
『直接話してくれてありがとう。何時でも連絡してきていいからね』
覗き込んできた佐藤刑事に見せながら、メールの文書を読む。
萩原刑事は不器用なのか器用なのか、たまに分からなくなる。けれど、彼は本当に優しい人だ。
「ありがとうございます。アメリカに行っても、たまにメールを送ります。ハガキも。なので、帰ってきたら一緒にご飯にでも行きましょう」
そう送ったあと、もちろん佐藤刑事もですよ。と本人に言った。
「ありがとう、Aちゃん」
「恐怖症、軽くなるといいな」
2人の優しい言葉に、私は涙を流しがら微笑んだ。
一時的なさようならを伝え、私は旅支度に勤しんだ。
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季 - 超超超面白いかった (7月30日 10時) (
レス) @page19 id: 20f0d382e7 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 更新頑張ってくださーい！！応援しています！！ (2022年8月31日 4時) (レス) @page19 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - この小説とても好きです。NlLさんこれからも頑張ってくださいm(_ _)m次の更新楽しみに待っています! (2022年5月30日 21時) (レス) id: 158cb424c8 (このIDを非表示/違反報告)
NIL(プロフ) - 侑さん» ありがとうございます(´；ω；｀)そして遅くなりました！是非これかも宜しければ読んでください(´；ω；｀) (2022年5月28日 10時) (レス) id: 62c4f4c405 (このIDを非表示/違反報告)
侑(プロフ) - 書きます書きます！！喜んでもらえるとあらば！！Twitterの方でも反応させていただきます！！ (2022年3月27日 22時) (レス) @page13 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NIL | 作成日時：2020年6月28日 22時
