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寝たい。
暗い空を見ながらそう思ったのは初めてだ。
久々に塗った赤いリップが台無しになるようにと手で思いっきり擦る。アイメイクだってもうぐちゃぐちゃなはず。
中々止まらない涙に苦戦しながらも私はおぼつかない脚で行き先の分からない道を歩いていた。
「……寂しいな」
ジョンハンさんのパーティーを抜け出してからもう2時間が経とうとしている。スマホでカトクを見ても、スンチョルからは一切連絡がない。もう二度と顔を見せないと言ったが、そんなの嘘だ。
あれが望んでしていた事じゃなかったなら今すぐ来て、謝って欲しい。誤解だ、本当に愛してるのはお前だけだって。
「よう姉ちゃん、」
「……」
「一緒に呑まないか」
ダラダラと歩いていたら、パッと見30後半っぽい男に声をかけられた。まさかヤリ目的?そうじゃなくても今は気分じゃないな。
「ごめんなさい、気分じゃないの」
「具合い悪いのかな?顔色が悪いよ」
「だから気分じゃないって言った」
「…休んだ方が良い、ほらおいで」
うるさいジジイだな。気分じゃないって言ってるじゃん。何もかもが気持ち悪くて、男って皆こうなんだ。
「やめて、やめてってば!!」
「ちょ、姉ちゃん危ない!」
男に腕を掴まれて、逃げ出そうと暴れる。やっと腕が解放されて走り出すと目の前がいきなり明るく光る。
それと同時に全身が燃えるように痛くなった。うるさい車のエンジンの音、男の叫び声、自分の心臓の音、見える視界はスローモーションで。
走り出した瞬間に車で轢かれてしまったと気付いてから、私は死ぬかの様に意識がなくなった。
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作者名:Gemini | 作成日時:2020年4月25日 11時