祈祷 ページ8
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こいつらは…どうして何度注意しても聞かないんだ。無茶するなとあれだけいったのに。
『みんなのことなら、僕は全部知ってるんだよ』
あろえの額にキスを軽くし、隣に寝ているぐちつぼに目線をやった。
体には細かい傷が無数にあり、だいぶ無茶をしたのだと悟った。
『大馬鹿者が』
隣に腰掛け、ふわふわとしている髪を撫でた。
全員、満身創痍。
少し休まないと動けないなぁ。
『……げんぴょん、』
げ「む〜〜…」
あまり構ってもらえず、拗ねてしまったげんぴょんに声をかける。
ツンとした顔でそっぽを向いているが、時々此方を見る姿に思わず笑った。
『ごめんよ。ほら、おいで』
そう言って腕を広げると、光の速さで此方に抱きついたげんぴょん。
げ「! ん〜〜…!もうこんな事したらヤダからね」
『あぁ、分かった。お前も頑張ったからな』
げ「ん…!」
満足したのか、僕の横に移動し、肩に頭を乗せ、眠り始めた。
『たらこも、おいで?』
た「わーい」
弱々しく声を出し、ふらふらとした足取りで此方に歩み寄るたらこ。
図々しくも僕の足の上に頭を乗せた。
じろっ、とたらこを見ると悪戯っ子のような笑みを浮かべ、そのまま夢の中へ行った。
血が飛び散っているこの部屋で、男4人と少女1人が密集し、息を弱めた。
中央に座る少女は、天井を眺め何かを呟いていた。
『天にましますわれらの父よ。
願わくは御名をあがめさせたまえ。
御国をきたらせたまえ。
みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。
われらの日用の糧を今日も与えたまえ。
われらに罪をおかすものをわれらがゆるすごとくわれらの罪をもゆるしたまえ。
われらを試みにあわせず悪より救いいだしたまえ。
国と力と栄えとは限りなくなんじのものなればなり』
最後の祈りの言葉は言わず、側に寝ている男たちの頭や頬、背中を撫でた。
その姿はまるで聖母マリアのようだった。
顔を天井から窓へと移し、朱殷色の瞳を外に向けた。
太陽が沈み始めていて、部屋の暖かい日差しが引いていく。
少女はゆっくりと瞳を閉じ、呼吸を一つついた。
『おやすみ、僕の可愛い子供達』
その声がやけに響いた気がした。
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ほたる(プロフ) - りゅーあさん» コメントありがとうございます!とても励みになります!更新はゆっくりですが、最後まで見て頂けると嬉しいです! (2019年11月2日 12時) (レス) id: 5cf69170d2 (このIDを非表示/違反報告)
りゅーあ - 面白いですね。続きをいつも楽しみにしています!周りでは、活動休止をしている人がいるので、更新して頂けるだけでも嬉しいですね! (2019年11月2日 7時) (レス) id: 30e35b4147 (このIDを非表示/違反報告)
ほたる(プロフ) - Resultさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて、とても嬉しいです! (2019年10月31日 21時) (レス) id: 5cf69170d2 (このIDを非表示/違反報告)
Result - Totemo omosiroi yo tanosimidanaa (2019年10月31日 19時) (レス) id: 30e35b4147 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほたる | 作成日時:2019年9月15日 19時