昔日 ページ30
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俺は小さい頃、孤児だった。
親は居らず、親族も引き取ろうとはしなかった。
そして行き着いた先は孤児院。
孤児院にいるシスターはとても優しかった。
どんな悪人だろうと許し、助けた。
寒がっている人には暖かい豆のスープと毛布を渡し、暑がっている人には水を渡した。
一度だけ、その理由を聞いたことがある。
［命は平等なのよ、葵。神様が与えてくださったものだから。だから例えどんな罪を犯したとしても、命を秤にかけても釣り合う、平等なものなのです］
俺にはよく分からなかった。
命が平等だと言うのなら、食べている動物の肉の命は平等ではないだろう。
しかし俺はシスターを喜ばせたくて、無理に笑った。
ら「……そうだね、シスター」
そういうとシスターはいつも嬉しそうに笑った。
シスターは俺を引き取ってくれた恩人だ。
笑っていて欲しい。
それから時間が経って、シスターは新しい子供を連れてきた。
ひどく痩せ細っていた。
シスターは翠と名前をつけ、一緒に暮らし始めた。
初めは話もしないし、部屋から出てこなかった翠だったが、シスターとみんなの優しさに触れ、打ち解けていった。
この暖かい場所。
即ちここが、俺の居場所だ。
そう思っていた。
その日は孤児院の近くにある平原で、花冠を作っていた。
普段入っちゃダメだったけど、自由時間だけは平原の端までは行っていいという決まりだった。
花冠を作るためのシロツメクサは端にしか咲いておらず、自由時間のたびに俺はシスターのために作ろうと努力した。
だが俺は自分が思っていた以上に不器用だった。
花冠はなかなか綺麗に作れなかった。
み「…何ヤッタンノ」
ら「うわ！！びっ…くりした、ぁ……翠か」
いつのまにか翠がすぐそばにいた。
俺の隣に座ると、作っている花冠をジッと見つめた。
ら「……、シスターに作りたいんだけどさ、なかなか上手くできなくて…」
翠はしばらく見つめていたが、貸シテ、と言った。
素直に俺が渡すと、花冠を作り始めた。
手際の良さに俺はおぉ、と思わず声を漏らした。
翠は器用だった。
オドオドとしていて公の場に才能を見せないだけで、不器用そうというイメージと真実は異なっていた。
み「ン、」
ら「ありがとう！翠、手先が器用なんだな」
素直にそう言うと、照れたように別ニ…と呟いて顔をそらした。
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ほたる(プロフ) - りゅーあさん» コメントありがとうございます！とても励みになります！更新はゆっくりですが、最後まで見て頂けると嬉しいです！ (2019年11月2日 12時) (
レス) id: 5cf69170d2 (このIDを非表示/違反報告)
りゅーあ - 面白いですね。続きをいつも楽しみにしています！周りでは、活動休止をしている人がいるので、更新して頂けるだけでも嬉しいですね！ (2019年11月2日 7時) (レス) id: 30e35b4147 (このIDを非表示/違反報告)
ほたる(プロフ) - Resultさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて、とても嬉しいです！ (2019年10月31日 21時) (レス) id: 5cf69170d2 (このIDを非表示/違反報告)
Result - Totemo omosiroi yo tanosimidanaa (2019年10月31日 19時) (レス) id: 30e35b4147 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたる | 作成日時：2019年9月15日 19時
