検索窓
今日:8 hit、昨日:6 hit、合計:38,975 hit

ページ26


_ini

校庭を照らす灯だけが眩しい夜空の下でひとつ、白い息を吐いた。吹き抜ける風はさすがに寒くて、部活の後だろうが末端を冷やしていく。

『あ、晃樹居た!』

そう言いながら俺のところまで来たAは可愛くラッピングされた袋を渡してきた。え、と声を漏らすとAはニコッと笑って

『はいこれ!今日はバレンタインだしね。寒い中練習頑張ってたご褒美的な!』

と言った。辺りを見回すと、同じようなものを持ってる部員たち。なーんだ、とは思ったものの素直に嬉しかったので「ありがとう」と伝えた。すると今度は少し恥ずかしそうに俯きながら『あ、あとさ…』と言葉を探し始めたAに、ぐ、と心が痛んだ。

『…須貝先輩、まだいるかな、』

考えてることなんて、もう分かってしまった。

先輩がまだ学校にいることは、知ってる。以前ばったり会った時にそんな話をしたから。
もし今、俺が、もう帰ったんじゃないって言ったら。渡さない方がいいんじゃないって言ったら。その渡すつもりだったチョコは誰の手に渡るんだろうか。
そんなんで貰ったって嬉しくないし、と「まだ居るんじゃない」なんて告げて。『ありがと!』と嬉しそうに笑ったAは早々にグラウンドからは消えて、それと入れ違うように部活仲間が近づいてきた。

「あれ、乾が貰ってんのなんか俺らと違くね?」

「…どーせランダムなんでしょ」

あの人に渡してるチョコが、特別なやつじゃなければいいな、なんて。受け取った手作りのチョコを見ながら、そう思うだけだった。




_izw

「…何これ」

『チョコ』

「誰の」

『私が買ってきた』

「……明日槍でも降るの?」

『シバくぞ?』

世の中は甘い香りで満ちてるはず。ギリ生徒会室も順応できたかな、と個包装のチョコを手に取りながら考える。

『…まぁ、今日バレンタインだし。日頃の労いの意味も込めてね』

半分以上は私の為だなんて言えないけど。口にチョコを投げ入れた。手作りじゃねーのかよ、なんて聞こえたけど、それこそ私がするとでも?別に市販だっていいじゃない美味しいんだし。

『…味は保証するよ』

「お前が言うな」

甘いチョコと目の前のタスクは…うん。なんだか合わないな。

▽→←courage of Valentine_ss



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.2/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
122人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Ruka | 作成日時:2021年5月16日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。