courage of Valentine_ss ページ25
_kwmr
「…あれ、Aさん?」
『あ、拓哉さん!』
帰り際。ホームルームを終えて部活に行こうと教室を出ると、その廊下に、僕の彼女が立っていた。緑のマフラーをしっかりと首に巻いて、どこか緊張した様子で。
「どうしたの?」
『えと…渡したいものがあって……』
渡したいもの?態々僕の教室に来たんだから、余程緊急なものなのだろうか、と思ってそう尋ねると、凄く驚かれてしまった。
『き、今日の日付ご存知ないですか…!?』
「今日……あっ、」
出る前、黒板に書かれた日付は、確か2月14日だったはずで。そういえばそんな時期か、なんて思いに耽ける。
『そういうことで…はっぴーばれんたいん、です。マカロン、頑張って手作りして、みました……』
じゃあ!またあした!そう言ってそそくさと紙袋を渡して帰ってしまった。中を覗くと、可愛くラッピングされた箱が。
「………わざとかなぁ」
クイズを嗜むの彼氏に、その想いを隠せると思ってるんだろうか?まぁ、そんなところも可愛いのだけれど。
_sgi
『……どう?』
「…うん、美味いわ」
『あ〜良かった〜』
日曜日。明日に備えてチョコを作ってる私の横には、隣の家から呼んできた幼馴染。なんだかんだで毎年味見を頼んでいる。勉強の間の休憩がてら。糖分だって大事でしょ?
「にしても量多いな…今年は何人に渡すん?」
『友達8人と後輩3人かな。毎年こんなもんよ』
「本命チョコは、誰にもあげへんの?」
少し驚いて駿貴の方を見ると、ニヤリと笑った。あぁ、なんだ。
『…駿貴以外に仲いい男子おらんからなぁ』
そう呟いて、くるり。袋を綴じてモールを捻った。
.
バレンタイン当日。鞄からの甘い香りは隠せないまま玄関を開けると見知った顔が居て。手に持ってた箱をぎゅ、と握りしめる。
「おはようA」
『おはよ。はい、これ』
昨日手伝ってくれたお礼。そう付け足すと納得したようだった。
『昨日と同じやつやし不味くはないはず!』
「俺が美味い言うたもんな」
『自信満々やな〜』
「当たり前やし〜」
ねぇ、駿貴。
私、本命渡す相手が居ないなんて一言も言ってないよ。
なんて、そんなことを言う勇気はないのだけれど。
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作者名:Ruka | 作成日時:2021年5月16日 0時