明けまして、かくしごと。_sgi ページ24
大晦日に夜更かしして翌朝眠くても、とりあえず6:00には起きる。朝ごはんはまた後で。身支度を整えて、しっかりカイロも用意して、マフラーを巻いて手袋もはめる。7:00になって玄関を開けると、ちょうど目の前に建つ家の玄関に、鍵を閉めてる後ろ姿を見つけた。タイミングはバッチリ。
1月1日、7時。昔からの、私たちの約束の時間。
『あけまして』
「おめでとさん。今年もよろしくな」
『こちらこそ!』
そんな言葉を交わして、2人揃って歩き出す。
舞鶴市はまぁ田舎。とは言っても京都府の中。それなりに神社は沢山ある。数十分歩いて辿り着いたのは、見慣れたこじんまりとした神社。
京都人として、参拝の知識はある程度あると思う。
まず鳥居の前で一礼。真ん中は通らない。これは常識。
お御籤はお参りのあと。社務所を通り過ぎて、手水舎にて体を清める。この真冬に水はだいぶ辛いけど、まぁしょうがない。本殿前に着くと、数組はもう並んでいたのでその最後尾に着く。お賽銭の用意をしようと思って財布を開けると、とある事実が発覚した。
『…五円玉無いかも』
「も〜ちゃんと用意しとけって」
『十円玉ならある』
「それは良くないなあ」
そうして硬貨の交換をする。昨年は私が五円玉を駿貴にあげた。結局お互い様だ。
数分並んで、私たちの番になった。2人並んでお賽銭を投げて鐘を鳴らし、二礼二拍手一礼。そっと、手を合わせる。
.
その後はお御籤をやって、私は中吉。駿貴は末吉。
そして無料で配ってる甘酒を貰って、ほっと一息をつく。白い息がふたつ、冷たい空気に消えていった。
『…お願いごと、なんにした?』
「それ言ったら意味ないやん…まぁ、いつもと同じやな」
『あは、私も』
いつもと同じ。それはそう、幼い頃から変わらない。
"良い1年になりますように"
昔、まだ両親たちと一緒に来てた頃、願いたいことが多すぎる!と嘆いてた私に駿貴が提案してくれた、少し欲張りな言葉。良いことがあっても悪いことがあっても、1年を通して考えると良いことの方が多かった気がする、少しずるい言葉。
昨年も、一昨年も、その前も。お互い同じように同じことを願っている。
君はきっと、そう思ってるんだよね。
きっと、私の願い事が変わってしまったことには気がついてない。
私の気持ちが変わったことにも、気がついてない。
"今年も駿貴の隣に入れますように"
そう切実に願っている私の事なんて、まるで気がついてないんだろうな。
122人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ruka | 作成日時:2021年5月16日 0時